marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

大根もち

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今日のお昼は大根もち。

この間から、妻が材料を用意していた。

私の仕事は大根のおろし番だ。ピーラーで皮をむいてからおろし始めた。

350グラムほどおろした。おろし金は銅製の本格的な物で、けっこう力がいる。

後はお願いをして、本を読んでいたらお呼びがかかった。

海苔のついたのは砂糖醤油のたれ、ついていないのはバター醤油味だ。

大根おろしはどこへ行ったのかと思うほど、もちと一体化していて柔らかかった。

お代わりをして、八個も食べてしまった。

大根おろしが入っているから消化もいいにちがいない。

どこかの名物かと思って調べたら、中華の点心の一種らしい。

また今度作ってもらおう。

 

北向きの窓

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めずらしく、ニコが書斎にやってきた。

朝早くに目を覚まし、朝ご飯の催促か、トンと足音を立てて椅子から下り、私が起きるのをドアのところで待っていた。カーディガンをひっかけてドアまで行くと、いそいそと階段を下りて居間に入っていく。

家中のドアは少しだけ開けてある。冬場は寒いのだが、猫は行きたいところに自由に行き来ができないとストレスがたまると聞いたので、危険な水回り以外どこも出入り自由にしている。

それでも、いつも誰かがついてきてくれるのを待ってから移動する癖がついている。こちらが眠りこけているときは仕方なく一人で行くのだから、いつも独りで行けるようなものだが、不思議とお付きを待っているのだ。

朝ご飯を済ませ、トイレが済んだら二階に上がっていった。いつもなら、妻のベッドに戻るところを今朝は何を思ったのか書斎の窓に来た。二階の窓からは遠くまで見通しがきく。猫はガラス越しでも外が見えるところを好む。

そう思って、一階の食堂と二階の書斎にはニコが座って外を見ることのできる高さに棚が設えてある。首を伸ばさなくても見える高さになるよう、トランクその他の小物を並べてある。ニコは風通しのいいステレオのプリメインアンプの上がお気に入りだ。

冬場はあたたかい南向きの窓のある寝室にばかりいたが、ようやく書斎の北向きの窓に上がるようになった。一か月健診の結果、結石は消えていた。また一月後にも尿検査が待ってはいるが、ひとまず安心だ。これで我が家にも春が来た。どことなくニコの顔もりりしく見える。

 

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第13章(2)

《白檀のあるかなきかの微香が私の前を通り過ぎた。立ち止まった女が見ていたのは五つの緑のファイリングケース、擦り切れた錆色の敷物、埃をかぶった家具、それにお世辞にも清潔とはいえないレース・カーテンだった。
「電話に出る人が必要ね」彼女は言った。「それから、カーテンはときどき洗濯に出した方がよさそう」
「聖スウィジンの日にでも出そうと思ってる。座ってくれ。つまらない仕事をいくつかは逃してるかもしれない。それと多くの美脚もね。金はかけない方なんだ」
「なるほど」彼女は控え目に言い、大きなスウェードのバッグを机のガラス天板の隅に注意深く置いた。そして、椅子の背にもたれ、私の煙草を一本とった。火をつけてやろうとした紙マッチで指を火傷した。
 娘は扇形に吐いた煙越しに微笑んだ。素敵な歯、少し大きめ。
「こんなに早く私に会えるとは思ってなかったでしょう。頭の具合はどう?」
「具合はよくない。思ってもみなかった」
「警察はよくしてくれた?」
「いつもどおりさ」
「大事なお事の邪魔はしてないわよね?」
「そんなことはない」
「でも、私に会えてうれしがってるようには見えない」
 私はパイプに煙草を詰め、紙マッチに手を伸ばして慎重に火をつけた。娘はご随意にという顔で見ていたが、パイプ愛好家は身持の堅さが身上だ。がっかりしていることだろう。
「君の話は出さないように気をつけた」私は言った。「なぜだかは分からない。とにかくもう私には関係がない。昨夜たっぷり嫌な思いをして、酒瓶で頭をどやしつけて寝たんだ。今では事件は警察の預かりだ。首を突っこまないように警告を受けた」
「あなたが私の話を出さなかったのは」彼女は穏やかに言った。「昨夜、私が物好きでぶらぶら窪地に足を運んだ、なんて言い種を警察は信じないだろう、と思ったから。連中は私に後ろ暗いことがあると疑い、観念するまで追及するだろう、と」
「どうして分かるんだ。私が同じことを考えなかったって?」
「警官だって、ただの人間」彼女は脈絡もなく言った。
「連中も生まれた時は人間だった、と聞いたことがある」
「あら、今朝はシニカルだこと」彼女は何気なさそうに、しかし抜け目なく部屋を見回した。「ここでうまくやれてるの? 財政的にという意味だけど。稼げてるのか、ということ―この程度の見かけで」
 私は鼻を鳴らした。
「それとも、心がけるべき? 差し出口をやめ、生意気な質問をしないように?」
「できるかどうか、試験ずみなのか?」
「それじゃ、二人でやってみましょう。教えて、なぜ昨夜私のことを庇ってくれたの? 私が赤毛で、スタイル抜群だったから?」
 私は何も言わなかった。
「こちらを試してみようかな」彼女は元気よく言った。「あの翡翠のネックレスが誰のものか知りたくない?」
私は顔がこわばるのを感じた。頭を絞ってみたが、確かなことは思い出せなかった。それから急に思い出した。翡翠のネックレスのことは一言も漏らしていない。
 私はマッチをとり、パイプに火をつけ直した。「別に」私は言った。「どうしてだ?」
「だって、私は知ってるから」
「ほほう」
「しゃべりたくてたまらなくさせるにはどうしたらいい。足の指でも捩る?」
「それじゃ」私は不承不承言った。「君はその話をするためにここに来たわけだ。さあ、聞かせてもらおう」
 青い瞳が大きく見開かれた。一瞬少し涙ぐんでいるように見えた。下唇を噛みしめたまま机を見下ろしていた。やがて、肩をゆすって唇をほどき、ざっくばらんに微笑んだ。
「ええ、自分が詮索好きだってことは重々承知してる。でも猟犬の血がそうさせるの。父は警官だった。名前はクリフ・リオーダン。ベイ・シティの警察署長を七年間勤めた。たぶん、それが問題なの」
「覚えがある気がする。何があったんだ?」
「お払い箱。父は傷ついた。賭博師の頭目でレアード・ブルネットという男が選挙で仲間を市長にし、父は左遷された。ベイ・シティで記録識別局というのはティーバッグほどのちっぽけな部署。それで父は退職してニ年ほどぶらぶらして死んだ。母は父を追うようにして亡くなった。それから二年、私はひとりぼっち」
「それは気の毒に」私は言った。》

「それと多くの美脚もね」は<And a lot of leg art>。清水氏はここをカット。村上氏は「たくさんの脚線美もね」と訳している。<leg art>を辞書で引くと「脚線美写真」。類語は<cheesecake>。「セクシーな女性の肉体美を見せる写真」のことだが、俗語としては「可愛らしい女性」の意味もある。「かわい子ちゃん」ぐらいが適当なのだが、もはや死語だ。「美脚」なら、辛うじてセーフか。
 
「金はかけない方なんだ」はズバリ<I save money>。<leg art>をカットした清水氏は「贅沢はできないんでね」と経済的な意味で訳している。村上氏は「金の節約になる」だ。この訳だと、暗に女の気を引くことが好きじゃないことを仄めかしているようにも読める。二つ並べておいて<I save money>と言うんだから、どちらにも金をかける必要を認めていない、という意味なんだろう。実にハード・ボイルドだ。

「素敵な歯、少し大きめ」は<Nice teeth, rather large>。清水氏は後半を省いて「美しい歯だった」としている。村上氏は前後をひっくり返して「少し大きめだが、素敵な歯だ」と訳している。マーロウは、ミス・アンのことははかなり気に入っている。ただ、その性格から、手放しでほめたくないがために条件を付けているに過ぎない。だとすれば、語順をどうすればいいかはおのずから明らかだ。

「娘はご随意にという顔で見ていたが、パイプ愛好家は身持の堅さが身上だ。がっかりしていることだろう」のところは<She watched that with approval. Pipe smokers were solid men. She was going to be disappointed in me>。清水氏は「彼女は別にいやな顔もしなかった。女はパイプタバコを吸う男を喜ばないものなのだ」と意訳している。村上氏は「彼女は感心したようにそれを見ていた。パイプ・スモーカーは身持ちが堅いというのが通り相場だ。遠からずがっかりすることになるだろう」と訳している。

<approval>は「賛意、許可」を示すという意味だ。自分も煙草を吸っているのだから、今さら「許可」でもあるまい。「おやおや、あなたはパイプ党なのね」というくらいの意味だろう。村上氏の「感心したように」はそういう意味だ。<solid>には「頑丈な」という意味もあるが、ここでは「信頼できる、堅実な」という意味が当てはまる。彼女が何にがっかりすることになるかはこの時点では明らかにされないが、男の部屋を独身女性が訪ねているのだから、男女関係が仄めかされていると見るのが一般的だ。

「警官だって、ただの人間」は<Cops are just people>。清水氏は「探偵だって、人間ですわ」と訳し、後に続く<she said irrelevantly>を省いている。清水氏は「自由直接話法」を好み、しばしば「彼(女)は、言った」のような「伝達節」を省略している。ただ、ここでの問題は<Cops>という「警官」一般を指す名詞を「探偵」と訳していることである。「探偵」が、一歩譲って「警官」一般を含むとしても、マーロウもその仲間に入る。はたして、それでいいのだろうか?

村上氏は「警官というのは普通の人間なの」(と彼女はどうでもよさそうに言った)と訳している。村上氏は<Cops>を「警官」一般と解釈している。この読み一つで次の訳も意味がちがってくる。次のマーロウの台詞<They start out that way, I've heard>を、清水氏は「もとは人間だったがね」と、訳している。この場合、自分も含めて言っている、つまり自虐と読める。

村上氏は「連中もそういう地点からスタートするという話を耳にしたことがある」と、あくまでも他人事として、警官を皮肉っている。ミス・アンの父が警官であったことが後で出てくるが、この部分はその伏線になっている。私立探偵と警官の間にはしっかりした線引きが必要なところではないか。

「できるかどうか、試験ずみなのか?」は<Would it work, if you tried it?>。出しゃばったまねをしない方がいいのか、という娘の問いに対するマーロウの台詞だ。清水氏は「口を出さないでいられればね」。村上氏は「心がけてできるものなのかな?」と訳している。<tried>には「試験ずみの、証明済みの」という意味がある。両氏の訳はそれを踏まえての意訳だろう。

それに対する娘の答えが<Now we're both doing it>だ。清水訳だと「私たち、二人とも、かかわりになったのよ」。村上訳だと「お互いはっきり言っちゃいましょうよ」と、まるっきり別物になってしまっている。会話は応答なので、問いに対する答えになっていないと会話が成立しない。両氏の訳は成立しているだろうか。私見では、清水訳では娘はマーロウの言葉を切り捨てているように読める。村上訳は一応受けとめた上で、持説を強要しているように聞こえる。

娘の口にした「生意気な質問」は<impertinent questions>。<impertinent>とは「(人・言動が)(特に目上の人などに対して)出しゃばった、ずうずうしい、無作法(無礼)な、生意気な、おうへいな」という意味だ。つまり、娘の気持ちは「不作法な態度は改めるから、話を聞いて」というものだ。読めば分かるが、この後の娘の話は、それまでと比べると極端に率直になっている。残念ながら、両氏の訳では、その真意が伝わってこない。

「しゃべりたくてたまらなくさせるにはどうしたらいい。足の指でも捩る?」は<What do you do when you get real talkative-wiggle your toes?>。清水氏は「どうすれば、あなたは話がしたくなるの? 足の指でもくすぐるの?」と訳している。村上氏は「おしゃべりをしたいときには、あなたはどんなことをするのかしら。足の指をもぞもぞさせたりするの?」と、訳している。

wiggle>は「(ぴくぴく、くねくね)小刻みに動かす」ことだ。清水氏は「くすぐる」と訳すことで、動作の主体を「客」と捉えているが、村上訳では、動作の主体は「主」のように読める。どうしても本音を吐かない相手に対して、業を煮やした娘が言う言葉だ。どちらが説得力があるだろうか?

「たぶん、それが問題なの」は<I suppose that's what's the matter>。清水氏はここをカットしている。村上訳では「それがここで問題になってくるわけ」。

「覚えがある気がする。何があったんだ?」は<I seem to remember. What happened to him?>。清水氏は「覚えている。今どうしてる?」、村上氏は「名前には覚えがある。彼は今どうしている?」だが< What happened to him?>を、「今、どうしている?」と訳すのはどうだろうか。その前に<what's the matter>と娘の口から聞かされていながら、少し気楽すぎるのではないか?

陽気に誘われて

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鈴鹿の森庭園」


外に出ることがあまりない。気分転換と称し、近所を半時間ばかり歩くのが習慣になっている。それでも季節の移り変わりには目が留まる。めっきり暖かくなってきて、どこの家の庭でも梅が見ごろだ。特に紅梅の色が目に鮮やかで、陽気のせいかそわそわしてくる。

県内の梅の名所はほぼ行きつくしたし、と思っていたところにTLで見事な枝垂れ梅の写真が流れて来た。鈴鹿の森庭園というところらしい。今まで知らなかったが、いつから知られるようになってきたのだろう。業者が管理しているらしく、駐車場は無料だが入園料が一人1500円必要という。

ものは試しと出かけてみた。家からだと高速に乗ると一時間程度だが、下道だと混雑ぐあいでは二倍かかる。幸いの上天気で、これならニコが昼寝してる間に帰って来られる、と下道で行くことにした。バイパスが通ったという話だったが、片道一車線ではかえって渋滞が起こる。昼前にやっと到着した。

駐車場には県外ナンバーの車が並び、入場券の販売所に行列ができていた。仮設トイレも設置され、土産物売り場まであった。よしずが張り巡らされ、ちょっとした見世物小屋のような外観だ。

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さほど、広くはないが、回遊路が巡らされ、順路に沿って歩いて行けば、途中の高台から鈴鹿の山を借景にした枝垂れ梅の花見が楽しめるようにできている。カメラを持った人が多く、格好の被写体になっていた。梅を背に記念写真を撮る人やら、ベンチでお弁当を広げる人やらいて、ちょっとしたお祭り騒ぎだ。夜にはライトアップもされるらしい。

おなかもすいてきたので、庭園を出て菰野方面に走った。とろろ飯の美味い店がある。そこで腹ごしらえをすませたら、すぐ近くにある美術館で開催中の絵本画家の原画展を見る計画である。

イメージの魔術師 エロール・ル・カイン展

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エロール・ル・カインは、絵本作家として知られているが、挿絵画家だけでなく、アニメーション作家でもあるらしい。作品を保護するために光量を抑えた展示室には、原寸大の原画が並んでいた。大きさは、大判の絵本程度で、絵の緻密さに舌を巻いた。

シンガポール生まれで、アジアに詳しい画家らしく、オリエンタルなムードに溢れた絵が印象的だった。なかでも、狛犬のできた奇縁を物語る『フォーの小犬』が、とても気に入った。フォーとはブッダのことで、殺生禁断の場所でガゼルを殺し、追放された獅子の子が、泥棒を捕まえたことで許され、狛犬になった、という話。やんちゃな獅子の子がとても可愛く描けている。

ビアズリーはじめ、先人の画家や挿絵画家の手法を取り入れ、自分なりの世界に昇華させている。淡い色使いと繊細な線描が原画ならではのタッチで楽しめるのが何よりだ。最近では印刷技術もよくなってきたが、細密画めいた筆触を再現するところまではできていない。原画展に来られてよかった。

 

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第13章(1)

13

 

《九時に目を覚まし、ブラック・コーヒーを三杯飲んだ。氷水を使って後頭部を洗い、アパートメントのドアに投げ入れられていた朝刊二紙に目を通した。ムース・マロイにまつわる二幕目の小さな記事があるにはあったが、ナルティの名前はなかった。リンゼイ・マリオットについては何も載っていなかった。社交欄になら出ていたのかもしれない。
 着替えをし、半熟卵を二個食べ、四杯目のコーヒーを飲んで、鏡を見た。眼の下にまだ少し隈が残っていた。出かけようとしてドアを開けたとき、電話のベルが鳴った。
 ナルティだった。しみったれた声だ。
「マーロウか?」
「そうだ。捕まえたのか?」
「もちろん、捕まえたさ」彼はいったん言葉を切り、わめき始めた。「言った通り、ヴェンチュラ・ラインでな。大騒ぎだった。身の丈六フィート六インチ、囲い堰みたいにがっしりした体格だ。フリスコで開かれてるステート・フェア見物に出かけるところだった。レンタカーのフロント・シートにクォート瓶が五本置いてあって、時速七十マイルで音もなく飛ばしながら、別の一本をラッパ飲みしていた。それに立ち向かうのは銃とブラックジャックを手にした郡の警官二人ときてる」
 ナルティが一呼吸置いたので、気の利いた文句をあれこれ思い浮かべたが、どれも今一つぱっとしなかった。ナルティが続けた。
「それで、やつは警官相手にエクササイズをしたんだ、警官たちが疲れて眠り込んでしまうと、パトカーのドアを一枚引っぺがし、無線機を溝の中にぶちこんだ。そして、新しい酒瓶の封を切り、自分も寝入ってしまった。しばらくして、目を覚ました警官たちが、ブラックジャックで頭を殴りつけた。やつが気がつくまで十分ばかりかかったが、怒りだした時には手錠をかけられてた。簡単なもんだ。今は留置場に放り込んである。飲酒運転、車内での飲酒、公務執行妨害二件、公共財産の棄損、保護観察下における逃亡未遂、暴行罪、治安妨害、そしてハイウェイへの違法駐車、愉快じゃないか?」
「何の冗談だ?」私は訊いた。「要件がわからない。自慢話を聞かせたかっただけか」
「人ちがいだったのさ」ナルティは乱暴に言った。「ヘメットに住んでいるストヤノフスキーという名のトンネル作業員で、サンジャック・トンネルの仕事を終えたところだった。妻と四人の子持ちで、かみさんはかんかんさ。マロイについちゃ、何かわかったかい?」
「何も。頭が痛くてね」
「いつでもいいが、暇があったら―」
「遠慮しとくよ」私は言った。「まあ、ありがとう。黒人殺しの調査はいつやるんだ?」
「関係ないだろう?」ナルティは鼻で笑って電話を切った。
 ハリウッド・ブールヴァードまで車を走らせ、ビルの脇にある駐車場に車を停め、オフィスのあるフロアまでエレヴェーターで上がった。私は小さな待合室のドアを開けた。依頼人が待つことができるように、いつも鍵はかけていない。
 ミス・アン・リオーダンが雑誌から顔を上げ、私に微笑みかけた。
 タバコ・ブラウン色のスーツの中は白いハイネック・セーターを着ていた。日の光の下では髪は混じりっ気なしの鳶色で、ウイスキー・グラス大のクラウンに一週間の洗濯物を包めるくらい大きな鍔つきの帽子をかぶっていた。おおよそ四十五度の角度に傾けているせいで肩に触れそうだった。にもかかわらず粋だった。そのせいで、といえるかもしれない。
 二十八歳くらいか。優雅というには少し額が狭かった。小さな鼻は詮索好きのように見え、上唇は少しばかり長すぎ、口も僅かだが横長すぎる。灰青色の眼の中に金の斑が見えた。素敵な微笑の持ち主だ。たっぷり睡眠をとったように見える。誰もが好きにならずにいられない可愛い顔だが、連れ歩く時、メリケンサックを用意しなければならないほどではない。
「オフィスが何時に開くのか知らなかったの」彼女は言った。「で、待つことにしたわけ。察するところ、今日は秘書はお休みのようね」
「秘書はいないんだ」
 私は部屋を横切って内側のドアの鍵をあけ、外側のドアのブザーのスイッチを入れた。「暇つぶし用に使っている応接間に行こう」》

新しい一日のはじまりである。ハードボイルド小説の探偵としては、マーロウは意外と思えるほど健康的な生活を送っている。いつも自分で作った朝飯を食べている。料理自慢でなくてもできる、卵を使った料理が好きなようだ。

「ムース・マロイにまつわる二幕目の小さな記事があるにはあったが、ナルティの名前はなかった」は<There was a paragraph and a bit about Moose Malloy, in Part II, but Nulty didn't get his name mentioned>。清水氏は「大鹿マロイのことは小さく載っていたが、ナルティの名前はなかった」と簡単に訳している。

村上訳は「ムース・マロイについての記事が出ていた。目立たないところに、パラグラフにしてひとつ、ふたつくらい。しかし、ナルティの名前は出ていなかった」。<Part II>を、村上氏は新聞の「二面」とでもとらえたのだろうか「目立たないところに」と訳している。ふつう<part 2>は「第二部」の意味だ。「続報」という訳語も考えたのだが、マロイ自身はまだ記事になっていないので、あきらめた。

「半熟卵」は文字どおり<soft boiled eggs>なのだが、清水氏は「やわらかいボイルド・エッグ」、村上氏は「柔らかめに茹でた卵」と訳している。清水訳は「ハード・ボイルド(小説)」への目配せだろうが、<soft boiled eggs>をいちいち「やわらかいボイルド・エッグ」や「柔らかめに茹でた卵」と訳すのは、ハード・ボイルドっぽくない気がする。

「しみったれた声だ」は<He sounded mean>。清水氏は「冷たい声だった」。村上氏は「彼は面白くもないという声を出していた」と訳している。<mean>は、ひとくちでは言えないほど多様な意味を表す単語なので、これが正解という決め手がない。文脈から考えて、いちばん相応しい訳語をあてるよりほかにないだろう。村上訳がまさにそれだ。

「彼はいったん言葉を切り、わめき始めた」は<He stopped to snarl>。清水氏はここをカットして、次の台詞に続けている。村上氏は「彼は言葉を切ってうなった」と訳している。<stop to>は「~をするために止まる」の意味。開き直って、警察の失態をわざと大げさに話そうと体勢を立て直すために、一度話をやめたのだろう。<snarl>は「うなる、ガミガミ言う」の意味。村上氏は「うなり声」の意味で訳しているようだが、続く言葉を「ガミガミ」言ったのではなかろうか。

「囲い堰みたいにがっしりした体格だ」は<built like a coffer dam>。清水氏は例によってここをカット。<coffer dam>は「囲い堰」。水中で工事をするとき、止水のために設けられる鋼矢板を連結した一時的な堰である。村上訳は「おまけに運河の堰みたいな図体をしてやがる」。「運河の堰」というのは「閘門」のことを指すのだろうか。今一つイメージが湧いてこない。

「フリスコで開かれてるステート・フェア見物に出かけるところだった」は<on his way to Frisco to see the Fair>。清水氏はここもカット。フリスコはサンフランシスコの略称で、村上氏は「サンフランシスコまで博覧会を見に行く途中だった」と訳している。サンフランシスコで博覧会が開かれたのは1915年。『Farewell, My Lovely』が刊行されたのは1940年だ。ここは「ステート・フェア」と考えた方がいいのではないだろうか。

「それで、やつは警官相手にエクササイズをしたんだ」は<So he done exercises with the cops>。清水氏は、続く<and when they was tired enough to go to sleep>とひとまとめに「その大男は警官を二人とも殴り倒して」と訳している。村上訳は「そこでやつは警官たちを相手にひと暴れした」だ。<exercise>は「運動、訓練」の意味で、現在ではそのまま用いられている。ここはそのまま使うか「組み稽古」くらいに訳す方が原意に沿うと思う。

「オフィスのあるフロアまでエレヴェーターで上がった」は<rode up to my floor>。清水氏は「オフィスに上り」と、あっさり訳しているが、村上氏は「私の事務所のある階まで歩いて上った」と、わざわざ「歩いて」をつけ加えている。気になるのが<ride up>である。何かに乗ることを意味する<ride>の後に<up>がつく場合、「まくれ上がる」のような意味でない場合、ふつうは「エレヴェーターで上がる」の意味になる。村上氏には何か考えるところがあったのだろうか?

「私は小さな待合室のドアを開けた。依頼人が待つことができるように、いつも鍵はかけていない」は<I opened the door of the little reception room which I always left unlocked, in case I had a client and the client wanted to wait>。清水氏は「いつも鍵をかけないでおく待合室のドアをあけた」と簡潔だ。村上訳は「いつも鍵をかけないままにしておく小さな待合室(レセプション・ルーム)のドアを開け、ひょっとして依頼人がやってきて、そこで待っていたりしないかと確かめた」。何だか、マーロウが物欲しげに見える。

アン・リオーダンの容貌に関するマーロウの観察のうち、清水氏がカットしている部分を次にあげる。「(鼻は小さく)詮索好きのように見え」、「(灰色のかかった碧い眼)金の斑が見えた」、「(誰にでも好かれる容貌だった)たっぷり睡眠をとったように見える。誰もが好きにならずにいられない可愛い顔だが、連れ歩く時、メリケンサックを用意しなければならないほどではない」。

メリケンサック」と訳したところは<brass knuckles>。村上氏は「ブラスナックル」と、そのまま表記している。「メリケン」はいうまでもなく「アメリカン」の意味で、今では死語だろうが、「ナックル・ダスター」と訳しても通じる度合いが上がるとも思えない。今のアクションものでは、「ブラスナックル」が主流なのだろうか。

「私は部屋を横切って内側のドアの鍵をあけ」は<I went across and unlocked the inner door>。清水訳は「私は、奥の部屋のドアをあけて」。村上訳は「私は部屋を横切って、内側のドアを開けた」だ。両氏ともに<unlocked>を無視している。マーロウは村上訳のように、依頼人の有無の確認のために最初のドアを開けるのではない。鍵のかかった内側のドアを開けるためには、はじめのドアを開ける一手間がいるのだ。

Reborn

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ずっと使っていなかったデジタル一眼。バッテリー切れで、充電がきかなくなっていた。新しいバッテリーを買って、カメラは動いたのだが、撮った写真をパソコンに取り込もうとしたら、今度はカード・リーダーがいうことを聞かない。

ドライバを更新してもだめなので、カメラから直接ケーブルで取り込もうと試みたが、やはりだめだった。そういえば、コンピュータが壊れたので、新しく替えたのを忘れていた。OSが新しくなっていたのだ。

そこで、昨晩、windows10に対応しているカード・リーダーをネットで注文した。それが今日届いた。さっそく試すと、何のことはない、すぐにパソコンに取り込むことができた。それが、この写真。

南からの日が差し込む明るい部屋なので、オートを切ってシャッタースピード優先で撮ってみた。手ブレもなしにちゃんとピントが合っている。自分でピント合わせをしたのはもう何年ぶりだろうか。大げさなようだが、カメラはもちろん、こちらの方も生まれ変わったような気がする。

もっとも被写体であるニコは、いつものように眠ってばかりいる。起きているときはカメラを向けると、すぐにそっぽを向いてしまうので、なかなか目をあいているところがとれない。シャイな子なのだ。

そのニコだが、この間ネットで「ちゅーる」のことが話題に上っていた。塩分濃度が濃くて、腎臓に悪いというような話だった。結石が出始めたのも、三度三度食べていたおやつのせいだったのかもしれない。

喜ぶから、というのでカリカリを食べ終わると与えていたが、そういえば、近頃は以前ほど飛びつかなくなっていた。何かを感じていたのかもしれない。真偽のほどはわからないが、しばらくおやつを止めてみた。

初めは、いつももらえる「ちゅーる」のないのが、変な気がしたようだが、すぐになれて、今ではすぐに療法食を食べてくれている。もうすぐひと月経つ。また尿を検査して、経過が良好ならもうクリニックに行かなくて済む。とはいっても療法食は続くらしい。やめると、また結石が出るというのだ。

気持よく食べてくれているので、それはいいのだが、いつまでも療法食というのはどうなのだろう。ふつうのカリカリが食べられる日が待ち遠しい。

 

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第12章(3)

《ランドールは首を振った。「もし、組織的な宝石強盗団なら、よほどのことでもない限り人は殺さない」彼は突然話を打ち切り、眼にどんよりした膜がかかった。ゆっくりと口を閉じ、固く結んだ。思いついたのだ。「ハイジャック」彼は言った。
 私はうなずいた。「それも考えられる」
「それにもう一つ」彼は言った。「どうやってここまで来た?」
「自分の車を運転して」
「君の車はどこに置いてあった?」
「モンテマー・ヴィスタの麓の歩道沿いに並んでるカフェの駐車場だ」
 ランドールはたいそう思慮深げに私を見た。後ろにいる二人の刑事が疑わし気な目で私を見た。留置場の酔っ払いがヨーデルを歌おうとして、しゃがれた声に気落ちしたのか、泣き出した。
「ハイウェイまで歩いて出た」私は言った。「車に手を振ったら、一人の娘が運転していた車をとめて、そこまで乗せていってくれた」
「たいした娘だな」ランドールが言った。「夜更けに、さびしい道で車をとめるとは」
「ああ、そういう娘もいるのさ。知り合いにはなれなかったが、いい娘らしかった」私は目をそらさなかった。連中が私の話など信じないことを知りながら、どうして私は嘘を並べているのだろう。
「小さな車でね」私は言った。「シボレーのクーペだ。ナンバーは見なかった」
「ほう、ナンバーを見なかったとさ」刑事の一人がそう言いい、屑籠にまた唾を吐いた。
 ランドールは体を乗り出し、念入りに私を見つめた。「もし何か隠しておいて、自分でこの件を洗って、売り出しに使おうなんて考えているなら、よした方がいい、マーロウ。君の話は気に入らない、すべての点でな。一晩考える時間をやろう。宣誓供述書をとらせてもらうのは明日になるだろう。そんなわけで、ひとつ言わせてもらおう。これは殺人事件で、警察の仕事だ。そして、警察は君の助けなど必要としない。たとえそれが役立つとしてもだ。我々が君に求めているのは事実だ。分かったな?」
「もちろんだ。で、もう家に帰っていいかな? 気分がすぐれないんだ」
「帰っていい」彼の眼は冷ややかだった。
 私は立ち上がり、誰もが押し黙っている中、ドアに向かった。四歩ばかり歩いたところでランドールが咳払いしてから何気なく言った。
「おっと、最後に一つだけ。君はマリオットが吸っていた煙草の種類に気づいていたか?」
 私は振り返った。「ああ、茶色のやつだな。南アメリカ産。フランス製のエナメルケースに入っていた」
 ランドールは身をかがめ、テーブルの上に積み上げたがらくたの中から、刺繍入りの絹のケースを押し出し、自分の方に引き寄せた。
「これに見覚えは?」
「あるよ。ちょうど今見ていたところだ」
「私が言っているのは、今夜より前にということだ」
「見たように思う」私は言った。「そこらに転がっていたんだろう。なぜだ?」
「君は死体を探らなかっただろうな?」
「オーケイ」私は言った。「お察しのとおり、いくつかポケットを調べた。それもその中の一つだ。悪いが、職業上の好奇心ってやつだ。しかし捜査妨害はしていない。何はどうあれ、死者は私の依頼人だった」
 ランドールは両手で刺繍入りのケースを持ち、蓋を開けた。座ったまま中をのぞき込んだ。中身は空っぽだった。三本の煙草は消えていた。
 私は強く歯を噛みしめ、くたびれた顔を保つようにした。容易なことではなかった。
「この中の煙草を吸っているところを見かけたかい?」
「見ていない」
 ランドールは冷やかにうなずいた。「見てのとおり空っぽだ。それなのにポケットに入っていた。中に細かな屑が入っていた。顕微鏡検査にかけてみないと確かなことは言えないが、どうやらマリファナのようだ」
 私は言った。「もしそんなものを持ってたら、今夜のような晩には二、三本吸いたくなるんじゃないか。彼には何か元気づけがいっただろう」
 ランドールは慎重にケースの蓋を閉めて、押しやった。
「それだけだ」彼は言った。「ごたごたに巻き込まれるんじゃないぞ」
 私は外に出た。
 霧は晴れ、星が輝いていた。黒いベルベットの空に貼りつけたクローム細工のような星が。私は車を猛スピードで走らせた。ひどく酒が飲みたかったが、バーはどこも閉まっていた。》

「眼にどんよりした膜がかかった」は<his eyes got a glazed look>。清水氏はここを「眼を輝かした」と訳している。<glaze>は「釉をかける」のように、物の表面につやを出すことを意味するが、眼に関して使われるときは「どんよりする」の意味になる。ランドールは何かを思い出したのだから「眼を輝かせ」としたい気持ちは分かるが、ランドールの胸に兆したのが疑念だったということで、こう表現したのだろう。村上訳は「その目はどんよりとした光を持った」と直訳調だ。

「ハイジャック」は<Hijack>とそのままだ。清水訳も「ハイジャックだ」。村上氏は「強奪犯に切り替わった」と、訳者の解釈が入っている。ハイジャックの意味としては「不法に輸送機関や貨物の強奪や乗っ取りを行うこと」だが、最近は航空機の乗っ取りを指すことが多いので、村上氏は説明がいると思ったのだろう。原作が書かれた時代(特に禁酒法が施行されていた1920年代)のアメリカでは「密造酒を輸送するトラックや船舶から積荷を強奪する行為を指した」という。ここで用いられているのもその意味だろう。

「知り合いにはなれなかったが」は<I didn't get to know her>。清水訳は「名前は訊かなかったが」。村上訳は「素性まではわからないが」。<get to know>には「~について知る」という文字通りの意味のほかに「知り合いになる」という意味がある。ここでは、そちらを採る方がスマートだろう。

「私は目をそらさなかった。連中が私の話など信じないことを知りながら、どうして私は嘘を並べているのだろう」は<I stared at them, knowing they didn't believe me and wondering why I was lying about it>。この一文の解釈が両氏で微妙にちがう。

清水氏は、<I stared at them>をカットして、改行した上で「彼らが信じていないことはわかっていた。そして、私は、なぜ嘘をいったのであろう、と考えた」と訳している。氏の考えでは「考えた」のは「私」ということになる。

村上訳を見てみよう。「私は彼らを見た。私の話を信じていない。どうしてそんなことで嘘をつくのか、不思議に思っている」だ。村上氏の訳だと「不思議に思っている」のは、「彼ら」のようだ。

もともとは一文であるものを、訳文で句点で区切ることは往々にしてあるが、そうすることで、主語が変化してしまったのではないだろうか。私見だが、マーロウは刑事たちの顔をじっと見つめ、彼らが自分の話を信じていないことを察知している、と同時に、自分の心の中で、「なぜ俺はこんな馬鹿なまねをやってるんだ」と自嘲しているのだ、と思う。

「彼の眼は冷ややかだった」は<His eyes were icy>。清水氏はここをカットしている。村上訳は「彼の目は氷のように冷ややかだった」だ。「氷のよう」か「冷ややか」のどちらかで通じると思うが。「誰もが押し黙っている中」は<in a dead silence>だが、清水氏はここもカットしている。面倒くさかったのだろうか。村上訳だと「不気味なまでに深い沈黙の中」という、いかにも文学的な表現になっている。総じて村上訳は言葉を重ね過ぎるきらいがある。

「テーブルの上に積み上げたがらくたの中から」は<the pile of junk on the table>。清水氏はここを「テーブルの上から」と略している。ここは、ポケットから出た所持品の中から選り出したことが分かるように訳す必要があるだろう。村上訳は「テーブルに積まれたがらくたの中から」だ。

<「オーケイ」私は言った。>のところ、原文は<“Okey,” I said>だが、清水氏は「私は嘘をいっても無駄だと思った」と、マーロウの内心を慮って書き直している。その必要があるだろうか。そのままで充分わかるところだ。村上訳は<「わかったよ」と私は言った>だ。

「ランドールは両手で刺繍入りのケースを持ち、蓋を開けた。座ったまま中をのぞき込んだ」は<Randall took hold of the embroidered case with both hands and opened it>。清水訳は「ランドールはシガレット・ケースを開いた」と、やけにあっさりしている。疲れていたのか、どうでもいいところだと思って端折ったのだろう。村上訳は「ランドールは両手で刺繍入りの煙草ケースを持ち、蓋を開けた。そして座ったまま中をのぞき込んだ」。

「どうやらマリファナのようだ」は<I have an idea it's marihuana>。清水氏は「麻薬タバコらしいんだ」と訳している。この時代、マリファナでは日本の読者に伝わらなかっただろう。新訳が必要な所以だ。村上訳は「おそらくマリファナじゃないかと思う」。

「ごたごたに巻き込まれるんじゃないぞ」は<And keep your nose clean>。清水訳は「余計なことに頭を突っこむな」、村上訳は「面倒に鼻を突っ込まない方がいいぜ」だ。「厄介なこと」に突っ込むのは「首」と相場はきまっていたような気がするが、調べてみると、「頭」も「鼻」もあるようだ。<keep one's nose clean>は「面倒なことに巻きこまれないようにする」ことをいう決まり文句。ならば、「鼻を突っ込む」が正解かも。