marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

ひまわりの湯

ひまわりの湯というのは、志摩スペイン村内にある温泉施設である。わりと近くにあるのだが、入湯料が1000円もするので、今まで行ったことがなかった。半額で入れる割引券が手に入ったので、出かけることにした。我が家からは、鳥羽回りパールロード経由というのがベストである。昼食は展望台にある食堂で伊勢うどん程度ですませることにして出発した。

昼をしっかり食べてから温泉に入ると、水圧の関係かどうかはしらないが、お腹が苦しくなってゆっくり湯に入っていられないのだ。パールロードの展望台は平日のせいかほとんど人がいなかった。独り旅の女性客が二人と、バイクのライダーが三人ほど、あとはカップルが何組か。地元のお年寄りがうどんのセットを食べていた。

伊勢うどんとめひびうどんを注文。セルフサービスの伊勢うどんを手渡すとき、「しっかりかき混ぜてから食べてください」と、アドバイスされた。ていねいな接客である。もともとたれの少ないのが伊勢うどん。見たところたれが入ってないように見える。下からかき混ぜると、溜り醤油ベースのたれが絡んで美味しく食べられるのだ。それと、めひびだ。乾燥しためひびが入っているのはいいのだが、かき混ぜずにそのまま食べると、めひびが戻らず歯ごたえがありすぎる。ここは、たれでふやかせて粘りが出るまでかき混ぜたいところだ。妻のめひびうどんは、普通のうどんなのにつゆの色が濃い。案の定塩っ辛かった。漁師どころだからか、塩味が濃いのだろうか。

スペイン村のエントランスを過ぎたあたりにホテルがある。温泉は、ホテルの裏辺りにあるらしい。駐車場に車を停め、ホテルの前を通って温泉まで歩く。立派なホテルだが、閑散としている。梅雨時の遊園地に来ようかという物好きはいないのだろう。

半額なので二人で千円である。バスタオルとフェイスタオルがついているので、手ぶらで来ても入浴可能だ。男湯と女湯は固定で、ほぼ同じ構成だが、サウナが女湯だけ塩サウナになっている。浴室は広々として窓際に大きな浴槽、反対側にジャグジーというか、泡が吹き出る浴槽が三つ。ひとつは両肩にあたるようにパイプが設置してあり、もうひとつは、腿、腰、足裏に泡が吹き出るタイプ。後ひとつは、浴槽の床の真ん中から吹き出てくるよくあるものだった。

湯はいわゆる美人の湯。つるつるすべすべの低張性単純アルカリ泉。平日の遊園地に併設された温泉である。客はまばらで、どの浴槽も独り占め状態。管理がいいのか、湯がきれいなのがなにより。窓の外は的矢湾が一望できる絶景露天風呂。岩風呂のつくりで温度は約40度。この日は薄曇りで風もなく、湯に入っては外に出て、座ったり寝転がったり気ままにしていても暑くも寒くもなかった。

これだけゆっくりしたら、妻はさぞ待ちくたびれているだろう、と思いながら外に出ると、なんとまだだった。しばらくして出てきた妻の言うのがいい。「バスタオルで髪を乾かそうと思っても、なかなか乾かないの。気がついたら、トリートメントを洗い流すのを忘れてそのまま出てきてしまったみたい。も一度入って洗ってたので遅くなったの。」

歳をとると、いろいろ忘れっぽくなるのは分かるが、最近度が過ぎている気がする。本当に大丈夫なのだろうか。帰りは鵜方に出て、ネットで見たケーキ屋さんでケーキを買って帰る。いい日だった。