marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

北向きの窓

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めずらしく、ニコが書斎にやってきた。

朝早くに目を覚まし、朝ご飯の催促か、トンと足音を立てて椅子から下り、私が起きるのをドアのところで待っていた。カーディガンをひっかけてドアまで行くと、いそいそと階段を下りて居間に入っていく。

家中のドアは少しだけ開けてある。冬場は寒いのだが、猫は行きたいところに自由に行き来ができないとストレスがたまると聞いたので、危険な水回り以外どこも出入り自由にしている。

それでも、いつも誰かがついてきてくれるのを待ってから移動する癖がついている。こちらが眠りこけているときは仕方なく一人で行くのだから、いつも独りで行けるようなものだが、不思議とお付きを待っているのだ。

朝ご飯を済ませ、トイレが済んだら二階に上がっていった。いつもなら、妻のベッドに戻るところを今朝は何を思ったのか書斎の窓に来た。二階の窓からは遠くまで見通しがきく。猫はガラス越しでも外が見えるところを好む。

そう思って、一階の食堂と二階の書斎にはニコが座って外を見ることのできる高さに棚が設えてある。首を伸ばさなくても見える高さになるよう、トランクその他の小物を並べてある。ニコは風通しのいいステレオのプリメインアンプの上がお気に入りだ。

冬場はあたたかい南向きの窓のある寝室にばかりいたが、ようやく書斎の北向きの窓に上がるようになった。一か月健診の結果、結石は消えていた。また一月後にも尿検査が待ってはいるが、ひとまず安心だ。これで我が家にも春が来た。どことなくニコの顔もりりしく見える。