marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

第15章

第15章のマーロウは、失踪したウェイドが残したたった一つの手がかり、Vという頭文字を持つ医師の情報を求め、大手機関に勤める知人を訪ねる。しがない私立探偵の目から見た大手同業者のオフィスに注ぐ辛辣な視線が印象的な場面だ。 この章も大きな異同は…

第14章

松原氏の『3冊の「ロング・グッドバイ」を読む』の書評に書いたことだが、アイリーンが夫の居場所を探してもらおうとしてマーロウを訪ねた先は、オフィスではなく自宅だった。久しぶりに続きを書いてみようと思い立って、原文を読むと最初にそう書いてある…

147でipodを聴く

この四月に退職したのだが、ついては親睦会から1万円程度の記念品を贈る規定があるという。何か希望の品はないかと訊かれたので、少し考えてからipod nanoをもらうことにした。定価10800円が手頃だと思ったからだ。さて、早速愛用のMac PowerBookG3を持ちだ…

横輪桜

「お昼は田園で食べて横輪桜を見に行きましょう。今日あたり満開のはずよ。」散り初めた桜を見ながら妻が言った。 横輪桜というのは、市の南西部に位置する横輪の里にだけ咲く桜の品種で、ふつうは一重なのだが、稀におしべが変化して花弁状になった、土地の…

桜坂

健康のことを考え、天気のいい日には毎日歩くことにした。家のある辺りは古くは長峰と呼ばれていたほどで、間の山という山の尾根づたいに旧道が通じている。見晴らしの良いのはけっこうだが、どこへ歩いていっても、帰りは上りとなる。運動になることはたし…

吉野行

突然思い立って、吉野に行くことにした。 子どもも連れ、吉野に出かけたのはもう十数年も前になるか。蔵王堂を訪ねた折、妻は急に体の調子が悪くなって民家の軒端にしゃがみ込んだまま、我々が帰るのを待っていたので満足に桜見物もしていない。 近くの桜が…

『メディチ家の黄昏』 ハロルド・アクトン

こういうのをデカダン趣味というのでしょうか。時は17世紀、トスカーナ大公国を舞台にフィレンツェの名門、誉れ高きメディチ家の衰退から崩壊に至る経緯を、厖大な資料を駆使し、想像力の限りを尽くして描き出した年代記。これが面白いの何のって。隙あら…