2012-01-01から1年間の記事一覧
山田五十鈴が亡くなった。以下は、彼女の主演作、成瀬巳喜男監督作品『流れる』の映画評である。大女優の死を悼み餞としたい。大川端近くの芸者置屋が舞台。 とにかく女優陣が凄い顔ぶれ。実は栗島すみ子を見るのはこれが初めて。山田五十鈴の姉貴分の芸者と…
いつかは書かれるべくして書かれた小説といえるかもしれない。同じ作者によって何年か前に書かれた異国の河岸に係留された舟を住まいとする青年の静謐な日常を記した『河岸忘日抄』なる小説がある。その年若い主人公には故国に「哲学的な」話題を話し合える…
マーロウは、ウェイドを車に乗せ、アイドルヴァレーに送り届ける。ヴァリンジャーは車の中のウェイドに「借りた金は必ず返すから」となおも食い下がる。そのヴァリンジャーにウェイドは言う。“Like hell you'd pay it back,”Waid said wearily.“You won't li…
19章の書き出しはこうだ。“I drove back to Hollywood feeling like a short rength of chewed string.”清水訳では「私は車を走らせて、ハリウッドへ戻った」。後半部をあっさり飛ばしている。村上は、その部分を「くたびれ果てた身体で、」と訳している。「…
ひまわりの湯というのは、志摩スペイン村内にある温泉施設である。わりと近くにあるのだが、入湯料が1000円もするので、今まで行ったことがなかった。半額で入れる割引券が手に入ったので、出かけることにした。我が家からは、鳥羽回りパールロード経由とい…
ひまわりの湯というのは、志摩スペイン村内にある温泉施設である。わりと近くにあるのだが、入湯料が1000円もするので、今まで行ったことがなかった。半額で入れる割引券が手に入ったので、出かけることにした。我が家からは、鳥羽回りパールロード経由とい…
マーロウはVの字で始まる名前を持つ三人目の医師、ドクター・エイモス・ヴァーリーを訪ねた。前二人の医者とちがって、ドクター・ヴァーリーは裕福そうだった。広い敷地に大きな古い樫の木が涼しい陰を宿す、豪壮な屋敷が建っていた。張り出し屋根を飾る“ela…
ピンチョンが2009年に発表した最新作だが、背景となる時代はなぜかシックスティーズ。『ヴァインランド』からピンチョンを読み始めた評者のような読者には、懐かしい古巣に戻ったような思い。50年ぶりに再結成されたビーチボーイズは、相変わらずブライアン…
妻が、「あきのの湯」で、医療用マッサージャーのお試しにつかまったことはすでに書いた。そのときはよかったのだが、数日してから背中が痛いと言い出した。どうやら、筋か何かを傷めたようだ。入浴後、塗り薬を塗布すると、少しはよくなるのだが、なかなか…
妻が、「あきのの湯」で、医療用マッサージャーのお試しにつかまったことはすでに書いた。そのときは、よかったのだが、数日してから背中が痛いと言い出した。どうやら、筋か何かを傷めたようだ。入浴後、塗り薬を塗布すると、少しはよくなるのだが、なかな…
『世の途中から隠されていること』を読んで以来、この人の書くものには注目してきた。ただ、今回の著作にはいささか唖然とさせられた。『股間若衆』とは。すでにお気づきの方もおられようが、仮名で書けば「こかんわかしゅう」。そう、「古今和歌集」のもじ…
もと警官で現在は古本屋を営むクリフ・ジェーンウェイが主人公のシリーズ物第四作。インターネットが普及し、特に経験がなくとも金さえあれば誰でも本を扱えるようになった。各地の古本屋に足を運び、自分の目で掘り出し物を探し当てては店に出す。そんな商…
元刑事で、今はデンヴァーで古書店を営むクリフ・ジェーンウェイを主人公とする古書ミステリシリーズ三作目。二作目の活躍で、思わぬ大金を手にしたクリフは、リチャード・バートンの稀覯本を競り落とす。ところが、それを聞きつけた老嬢がクリフの店を訪れ…
第17章のマーロウはセパルヴェダ・キャニオンから町へ帰ってきて食事にありついたところ。コーヒーを飲みながら、Vという頭文字ではじまる三人の中からウェイドを匿っているもぐり医者を探すことの難しさを感じ始めていた。その難しさを博打にたとえる「Vで…
第16章の舞台は、牡猫を思わせるユーカリ独特の匂いに満たされ、死んだように静かなセパルヴェダ・キャニオン。マーロウが愛用のオールズモビルで向かったのはVの頭文字ではじまる三人のもぐり医者の一人ドクター・ヴェリンジャーの経営する芸術家コロニーだ…
全国の日帰り温泉を 紹介する雑誌のひとつに「温泉○士」なるものがある。たまたま、近所の温泉についてネットで調べていた妻が、その温泉が雑誌に紹介されたので、今月号を 持っていくと無料になるという記事を見つけた。さっそく本屋に電話をすると在庫があ…
言葉が出にくくなった。ひと頃なら、思い出そうとする努力もなしに、言葉があふれ出してきたものだが、昨今では何かを言おう、書こうとすると、まず心に浮かんだことを言い表す言葉を見つけなければならない。努力を怠れば、いつも同じ言い回しの繰り返しに…
由良君美といえば、今では、その著書もほとんど絶版となっているが、70年代怪奇幻想文学の一時的なブームが起こったとき、仏文学の澁澤龍彦、独文学の種村季彦と並び、英文学の先達として脚光を浴びた一人。代表作に『椿説泰西浪漫派文学談義』がある。もと…
『マルタの鷹』は、ダシール・ハメットの代表作であるだけでなく、ここからハードボイルド探偵小説というジャンルがはじまったというべき記念碑的な作品である。サム・スペードがいなければ、レイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウも、ロス・マク…
全国の日帰り温泉を紹介する雑誌のひとつに「温泉○士」なるものがある。たまたま、近所の温泉についてネットで調べていた妻が、その温泉が雑誌に紹介されたので、今月号を持っていくと無料になるという記事を見つけた。さっそく本屋に電話をすると在庫がある…
昨日いつものように歩いていたら、退職した大先輩に会った。 「こんなとこまで歩いているの?10000歩ぐらい歩く?ぼくは、6000歩がせいぜいだなあ。」 「いえ、まあ3000歩ぐらいですよ。」 と答えたのだったが、今日は天気もよく、少しがんばっ…
少し前に読んだマーセル・セローの『極北』の舞台がシベリアの永久凍土だった。近未来を描いた小説が極北を舞台に採用していることが新鮮だったが、この本を読んで、作家がなぜ北の土地を選んだかがよく解かった。未来予測をテーマにした本は多いが、わずか…
一日中家にいるようになってから、ニケはとっても甘えん坊(嬢?)になりました。 昼間もほとんど寝ているけど、眼が覚めたときにそばにいないと、探しに降りてきます。 もう一度寝たいときにはベッドに連れて行き、腕枕をおねだりします。 寝たりたときは、…
正直なところ、テリー・イーグルトンの名前は何度も目にしているが、書かれたものを読んだことがない。そんな人間がこの分厚い本をなぜ手にとってみようと思ったのか。理由は至極簡単、面白そうだったから。筒井康隆の『文学部唯野教授』でも紹介されている…
もうずいぶん昔、『輪舞』という洋画があった。オムニバス風にいくつかのエピソードがあって、ひとつのエピソードの最後のシーンが次のエピソードの始まりにつながるというしゃれた形式だった。そこから、こういう映画のことを「ロンド」形式と呼ぶようにな…
新しいコンピュータを買った。今まで使っていたのはイーヤマのデスクトップでOSはWindows 98SE。さすがに近頃は使いづらくなってきていた。古いOSやモニタに対応してないサイトが増え、画像がワイド画面を基準にしていて普通のモニタではちゃんと表示されな…
いわゆる「近未来小説」。何らかの理由で人類が滅亡しかけた後に生き残った人々の悲惨な生活を描いた「ディストピア」ものである。しかし、この紹介ぶりから、よくあるSF小説を想像されると困る。たしかに、設定はSF的かもしれないが、内容はきわめてリアル…
第15章のマーロウは、失踪したウェイドが残したたった一つの手がかり、Vという頭文字を持つ医師の情報を求め、大手機関に勤める知人を訪ねる。しがない私立探偵の目から見た大手同業者のオフィスに注ぐ辛辣な視線が印象的な場面だ。 この章も大きな異同は…
松原氏の『3冊の「ロング・グッドバイ」を読む』の書評に書いたことだが、アイリーンが夫の居場所を探してもらおうとしてマーロウを訪ねた先は、オフィスではなく自宅だった。久しぶりに続きを書いてみようと思い立って、原文を読むと最初にそう書いてある…
この四月に退職したのだが、ついては親睦会から1万円程度の記念品を贈る規定があるという。何か希望の品はないかと訊かれたので、少し考えてからipod nanoをもらうことにした。定価10800円が手頃だと思ったからだ。さて、早速愛用のMac PowerBookG3を持ちだ…