marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

2013-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『スクールボーイ閣下』ジョン・ル・カレ

村上春樹が「ぼくは三度読んで、そのたびに興奮した」と絶賛し、ル・カレの最高傑作としたのが本作『スクールボーイ閣下』(原題“ The Honourable Schoolboy ”)だ。前作『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』に継ぐスマイリー長篇三部作の第二作。…

『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』ジョン・ル・カレ

二度読んだ。結果から言えば、ここは、と思わせる部分がないこともないが、全体的にはさほど読みづらさは感じなかった。読みづらさを感じる原因は、フラッシュバックを駆使した回想視点の導入による時制の交錯や、複数の視点人物の瞬時の転換といった原作者…

「膳」の鰻どんぶり

二階で本を読んでいると、「そろそろ行こうか?」と声がかかった。「なんだった?」と、訪ねると「MCC」と返事。毎月第三日曜日は、MCCのオフ会の日。「忘れてた」と、返事して急いで用意した。 薄曇りで、数日来のような夏日ではない。麻の上着を着て…

うなぎ丼

二階で本を読んでいると、「そろそろ行こうか?」と声がかかった。「なんだった?」と、訪ねると「MCC」と返事。毎月第三日曜日は、MCCのオフ会の日。「忘れてた」と、返事して急いで用意した。 薄曇りで、数日来のような夏日ではない。麻の上着を着て…

『春の祭典』アレホ・カルペンティエール

「彼らを見なよ。企業の国営化に対抗して、ヤンキーたちがこれから輸出規制を強化することを知っていながら、彼らは歌っている。この国の食料品店は空っぽになるだろうし、車は交換部品や燃料の不足から止まってしまうだろう。歯ブラシ一本、タイプライター…

『石蹴り遊び』フリオ・コルタサル

幻想的な短編小説の名手フリオ・コルタサルの筆になる、あまりにも有名な長篇小説。何がそんなに有名なのかは後で説明するとして、まずはざっとあらすじを述べる。主人公は、作家自身をいやでも思い浮かべてしまうブエノスアイレス出身で、パリでボヘミアン…

長谷寺

いい日和が続く。風は少々あるが、気温はかなり高くなるという予報。オープン・カーとはいうものの、買ってしばらくは真冬でも屋根を開けて走ったが、夏の暑さと冬の寒さは厳しく、近頃では屋根を閉めて走ることが多くなっていた。GW前に妻が包丁で指を切…

長谷寺

いい日和が続く。風は少々あるが、気温はかなり高くなるという予報。オープン・カーとはいうものの、買ってしばらくは真冬でも屋根を開けて走ったが、夏の暑さと冬の寒さは厳しく、近頃では屋根を閉めて走ることが多くなっていた。GW前に妻が包丁で指を切…

近長谷寺

GWも後半に入り、我が家の前の旧街道もいつにもまして車の行きかう音がたえない。幸い寒さも峠を越したらしく、降り注ぐ日ざしのあたたかさに誘われてどこかにでかけたくなった。何処に行こうか。一応観光地なので、どこにいっても人出が多い。あまり人の…

近長谷寺

GWも後半に入り、我が家の前の旧街道もいつにもまして車の行きかう音がたえない。幸い寒さも峠を越したらしく、降り注ぐ日ざしのあたたかさに誘われてどこかにでかけたくなった。何処に行こうか。一応観光地なので、どこにいっても人出が多い。あまり人の…

『翻訳に遊ぶ』木村榮一

ラテン・アメリカ文学にはまっている。一昔前にもなろうか、ラテン・アメリカ文学のブームが起きた。何事によらず、ブームとか流行とかには縁がなく、ほとぼりが冷めて人々が熱気を失いはじめたころになって興味を覚える天邪鬼な性行があり、今頃になって絶…

『キャンバス』サンティアーゴ・パハーレス

井伏鱒二が、自作の『山椒魚』を自選集に収めるに際し、結末部分をばっさり削除してしまった事件を思い出した。教科書にも載っている有名な作品を、いくら作者であっても勝手に改編することが許されるのか、暴挙ではないか、というのが批判する側の論拠であ…