marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

2015-05-01から1ヶ月間の記事一覧

 『歩道橋の魔術師』 呉明益

表題作の題名どおり、歩道橋の上に店を出す魔術師を各篇のつなぎに使った連作短篇集。時は1980年代初頭。今はなき台北の一大商業施設「中華商場」を舞台として、そこに暮らしていた少年たちの出会いや別れ、初恋、死といった、いずれも少し胸の奥がいたくな…

『Novel 11, Book 18 ノヴェル・イレブン、ブック・エイティーン』ダーグ・ソールスター

誰もそのことによって傷つけられはしない(本人は別として)。それどころか、その行為に加担することで利益を得る者すらいる。しかし、道義的に見れば社会的に許されない行為であることはたしかだ。事実を知れば誰も彼を許そうなどとは考えないにちがいない…

『パリの家』エリザベス・ボウエン

三部構成で一部と三部は現代の「パリの家」を舞台とし、間に挟まれた二部は十年前の親の世代の恋愛事件を扱っている。ヘンリエッタは十三歳。早くに母を亡くし、父の都合でロンドンを離れ独り伊仏国境近くに暮らす祖母の家に向かう途中、同行者の都合で、パ…

『紙の動物園』ケン・リュウ

アメリカにおいては評価されにくいと聞く短篇を主体とするからか、本国では単独著作は未刊行。翻訳によって外国で作品集が刊行される珍しい作家である。これも訳者によって編まれた日本独自のオリジナル短篇集。表題作「紙の動物園」は20ページたらずの短篇…