marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『服従』 ミシェル・ウエルベック

示唆に富む小説である。著者の作品は『素粒子』しか読んでいないのだが、それに比べると、ずいぶん読みやすくなっている。小説の核となる部分は近未来を扱っているが、それほど遠い未来ではない。舞台はフランス。主人公はパリ第三大学教授フランソワ。専門…

『オルフェオ』 リチャード・パワーズ

愛犬フィデリオの異変にあわてたピーター・エルズは緊急サービスに電話した。それが事をややこしくしてしまった。やってきた二人組の刑事は、大量の本やCDで埋まった書棚、犬の死体、素人には不似合いな化学実験器具から何かを察知したのか、翌日別の二人組…

『老首長の国』 ドリス・レッシング

南ローデシア(現ジンバブエ)を主な舞台とした短篇集。ドリス・レッシングはペルシアに生まれ、五歳の時、南ローデシアに家族で移住。そこで三十年過ごした後英国に渡り、作家となる。副題にあるとおり、アフリカに想を得た短篇ばかりを集めているが、なか…