marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

2016-02-01から1ヶ月間の記事一覧

『ホワイト・ティース』(上・下) ゼイディー・スミス

「おれたちの子供はおれたちの行動から生まれる。おれたちの偶然が子供の運命になるんだ(十八字分傍点)。そうさ、行動はあとに残る。つまりは、ここだってときに何をするかだよ。最後のときに。壁が崩れ落ち、空が暗くなり、大地が鳴動するときに。そうい…

『夜、僕らは輪になって歩く』 ダニエル・アラルコン

小説が突然そこで断ち切られたように終わると、二十歳過ぎの青年の若さゆえの思いこみが招きよせた片恋の、そのあまりにも過酷に過ぎる結末に、それまで行間に漂っていたはずのやるせなさのようなものが、ざらりとした荒い手応えを感じさせるものに一瞬にし…

『その姿の消し方』 堀江敏幸

久し振りの長篇小説と思って楽しみに読みはじめたが、十三章のそれぞれには表題が付されていて、それぞれが独立した短篇としても読めるようなつくりである。いかにもこの作者の書きそうな独特の気配がしている。給費留学生として渡仏していたおりに見聞きし…

『ひとり居の記』 川本三郎

表題はメイ・サートン『独り居の日記』から。川本三郎は自作のタイトルのつけ方が上手い。アッバス・キアロスタミ監督の映画タイトルをちゃっかりいただいた『そして、人生はつづく』の続篇が、この『ひとり居の記』。どちらも、漢字を仮名にしたり、読点を…

『つかこうへい正伝(1968-1982)』 長谷川康夫

演劇界において、今も「つか以前」、「つか以後」という言葉が残るほど、不世出の演劇人つかこうへいの「正伝」である。つかこうへい率いる劇団の役者、スタッフの一人として、そのあまりにも伝説的な芝居がどうやって作られていったのかを間近に体験した者…