marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

2017-05-11から1日間の記事一覧

『大いなる眠り』第六章(2)

《また一時間が過ぎた。暗くなり、雨にけぶった店の灯が街路の暗がりに吸い込まれていった。路面電車の鐘が不機嫌な音を響かせた。五時十五分頃、革の胴着を着た長身の若者が、傘を手にガイガーの店から出てきて、クリーム色のクーペを取りに行った。彼が店…