marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

2017-10-13から1日間の記事一覧

『パリに終わりはこない』エンリーケ・ビラ=マタス

エンリーケ・ビラ=マタスは邦訳された全作を読んでいるが、今のところではこれがベストだと思う。前二作も意表を突く話題に驚かされつつ楽しく読めたが、知的な部分が前に立ちすぎ、小説としての魅力が今一つ出ていない憾みがあった。本作も一応、著者本人…

『大いなる眠り』註解 第十四章(2)

《数は多くないが趣味のいい家具が置かれた快適な部屋だった。壁の奥に開けられた石敷きのポーチに通じるフレンチ・ウィンドウからは山麓の夕暮れが見渡せた。西壁の窓の近くに閉じられたドアが、玄関ドアの近くには同じ壁にもう一つドアがあった。最後の一…