marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第17章(1)

17 【訳文】(1) 《呼び鈴を鳴らそうが、ノックをしようが、隣のドアから返事はなかった。もう一度試してみた。網戸の掛け金は外れていた。玄関ドアを試してみた。ドアの鍵は開いていた。私は中に入った。 何も変わっていなかった、ジンの匂いすらも。床に…

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第16章

16 【訳文】 《そのブロックは前日に見たのとそっくり同じだった。氷屋のトラックと私道の二台のフォードを除けば通りは空っぽで、角を曲がったところでは砂埃が渦を巻いていた。私は車をゆっくり走らせて一六四四番地の前を通り過ぎ、離れたところに停め、…

『さらば愛しき女よ』を読み比べる―第15章

15 【訳文】 《女の声が答えた。乾いたハスキーな声で外国なまりがあった。「アロー」「アムサーさんとお話ししたいのだが」「あのう、残念です。とってもすみません。アムサー電話で話すことありません。わたし秘書です。伝言をお聞きしましょう」「そこの…

『さらば愛しき女よ』を読み比べる―第14章(2)

14【訳文】(2) 《電話のベルが鳴り、上の空で電話に出た。冷静で非情な、自分を優秀だと思い込んでいる警官の声。ランドールだ。決して声を荒らげることはない。氷のようなタイプだ。「通りすがりだったんだよな、昨夜ブルバードで君を拾ってくれた娘は?…

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第14章(1)

14 【訳文】 《私はロシア煙草の一本を指で突っついた。それからきちんと一列に並べ直し、座ってた椅子をきしませた。証拠物件を捨ててはいけない、というからには、こいつは証拠品だ。しかし、何の証拠になる? 男がときどきマリファナ煙草を吸っていて、何…

トリミング

昨日、トリミングしてもらったばかりのニコ。長く伸びたフリルや指の間から伸びた毛を短くカットしてもらって、ひと回り小さくなった。 二階ホールの手摺子の前で、ちょっとおすまし。寒い間、寝室のベッドの上や陽のあたる南向きの窓ばかりにいたニコが、陽…