marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

2023-01-01から1年間の記事一覧

五冊の『ザ・ロング・グッドバイ』を読む

”Desert Rose”は薔薇ではない。砂漠で採れる石だ。 14 【訳文】 翌朝、耳たぶについたタルカム・パウダーを拭いているとベルが鳴った。 玄関に行ってドアを開けると、一対のバイオレット・ブルーの瞳があった。 彼女は茶色のリネンを着て、赤唐辛子(ピメン…

五冊の『ザ・ロング・グッドバイ』を読む

山羊はビール瓶の破片を食べるか? 13 【訳文】 午前十一時には別館のダイニングルームから入って右側の三番目のブースに座っていた。壁を背にしていたので、出入りする客を見ることができた。よく晴れた朝で、スモッグはなく、上空の霧もなく、眩いばかりの…

五冊の『ザ・ロング・グッドバイ』を読む

“swing arm”はキツツキの翼か? 12 【訳文】 その手紙は階段の下にある赤と白に塗られた巣箱の形をした郵便受けに入っていた。支柱から張り出した腕木に取り付けた巣箱の屋根の上でいつもは寝ているキツツキが起きていた。それでも、ふだんなら中を覗かなか…

五冊の『ザ・ロング・グッドバイ』を読む

“perfect score”は「満点」のこと 11 【訳文】 朝、髭を剃り直し、服を着て、いつものようにダウンタウンに車を走らせ、いつもの場所に車を停めた。私が時の人であることを駐車場係が知っていたとしたら、素振りさえ見せないプロの仕事だった。私は二階に上…

五冊の『ザ・ロング・グッドバイ』を読む

10 (turn+目的語+over)は「物事をあれこれ考える、熟考する)という意味 【訳文】 ポケットを探って所持品預かり証の控えを渡し、現物を確認してから原本に受領のサインをした。身の回り品をそれぞれが収まるべきポケットに戻した。受付デスクの端に覆いか…

五冊の『ザ・ロング・グッドバイ』を読む

9 “up (down) one’s street”は「お手のもの」 【訳文】 早番の夜勤の看守は肩幅の広い金髪の大男で人懐っこい笑みを浮かべていた。中年で、もはや哀れみや怒りからは縁遠くなっていた。何事もなく八時間をやり過ごすことが望みで、たいていのことは卒なくこ…

四冊の『長い別れ』を読む

8 “get a lot of business”は「もうかる」という意味 【訳文】 重罪犯監房棟の三号監房には寝台が二つ、寝台車(プルマン)スタイルでついていたが、混みあっていないようで房を独り占めできた。重罪犯監房の待遇は上々だ。特に不潔でも清潔でもない毛布が…