marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

The Long Goodbye

第25章

第25章一週間後の夜、ウェイドから「来てくれ」と電話があった。車を飛ばして駆けつけてみると、アイリーンは煙草を口にくわえ玄関口に立っていた。ウェイドは、近くの叢の陰で頭から血を流して倒れていた。アイリーンに電話で呼ばれてやってきたローリング…

第24章

ロジャー・ウェイドの後からパーティーの席にもどったマーロウは、ローリング医師がウェイドに「妻に近づくな」と警告するところを目撃する。軽く相手をいなすウェイドの頬をローリング医師は手袋で打つ。ホストとして自分を抑制できるウェイドをマーロウは…

第23章

カクテル・パーティーに招待されたマーロウは、車でアイドル・ヴァレーにあるウェイド邸に向かう。使用人のキャンディに案内された部屋にはリンダ・ローリングとその夫の姿もあった。酒を飲むと自分を見失うロジャーの頼みごとというのは、本を仕上げるまで…

第22章

第22章の舞台はおなじみのバー、<ヴィクターズ>。テリーとの約束を果たすためにやってきたマーロウが、ここで出会うのがリンダ・ローリング。レッノクス夫人の姉で、ウェイド夫人の主治医ローリング医師の妻にあたる。ギムレットを飲みながら、互いの腹…

第21章

いくらハードボイルド探偵小説といえども、毎回毎回が緊張した事件の連続では、つきあっている読者のほうが疲れてしまう。アントレの後にデザートがくるように、緊張の後には弛緩がほしい。第21章は、一仕事やり終えた次の日、マーロウのどうってことない一…

第20章

マーロウは、ウェイドを車に乗せ、アイドルヴァレーに送り届ける。ヴァリンジャーは車の中のウェイドに「借りた金は必ず返すから」となおも食い下がる。そのヴァリンジャーにウェイドは言う。“Like hell you'd pay it back,”Waid said wearily.“You won't li…

第19章

19章の書き出しはこうだ。“I drove back to Hollywood feeling like a short rength of chewed string.”清水訳では「私は車を走らせて、ハリウッドへ戻った」。後半部をあっさり飛ばしている。村上は、その部分を「くたびれ果てた身体で、」と訳している。「…

第18章

マーロウはVの字で始まる名前を持つ三人目の医師、ドクター・エイモス・ヴァーリーを訪ねた。前二人の医者とちがって、ドクター・ヴァーリーは裕福そうだった。広い敷地に大きな古い樫の木が涼しい陰を宿す、豪壮な屋敷が建っていた。張り出し屋根を飾る“ela…

第17章

第17章のマーロウはセパルヴェダ・キャニオンから町へ帰ってきて食事にありついたところ。コーヒーを飲みながら、Vという頭文字ではじまる三人の中からウェイドを匿っているもぐり医者を探すことの難しさを感じ始めていた。その難しさを博打にたとえる「Vで…

第16章

第16章の舞台は、牡猫を思わせるユーカリ独特の匂いに満たされ、死んだように静かなセパルヴェダ・キャニオン。マーロウが愛用のオールズモビルで向かったのはVの頭文字ではじまる三人のもぐり医者の一人ドクター・ヴェリンジャーの経営する芸術家コロニーだ…

第15章

第15章のマーロウは、失踪したウェイドが残したたった一つの手がかり、Vという頭文字を持つ医師の情報を求め、大手機関に勤める知人を訪ねる。しがない私立探偵の目から見た大手同業者のオフィスに注ぐ辛辣な視線が印象的な場面だ。 この章も大きな異同は…

第14章

松原氏の『3冊の「ロング・グッドバイ」を読む』の書評に書いたことだが、アイリーンが夫の居場所を探してもらおうとしてマーロウを訪ねた先は、オフィスではなく自宅だった。久しぶりに続きを書いてみようと思い立って、原文を読むと最初にそう書いてある…

第13章

午前11時のリッツ・ビヴァリー・ホテルのバー。マーロウは、人と会う約束でここに来ている。壁一面のガラス窓からプールが見えている。マーロウは飛び込みをする娘を欲望を感じながら眺めている。それまでとは明らかにちがう展開への予感を感じさせる。「…

第12章

第12章は、マーロウが自宅の郵便受けに手紙を見つける場面からはじまる。原文は次の通りだ。“The letter was in the red and white birdhouse mailebox at the foot of my steps.A woodpecker on top of the box attached to the swing arm was raised and…

第8章

第7章は殺人課課長によるマーロウ尋問の場面。例によって挑発に乗った課長は、マーロウの思うつぼにはまってしまう。グレゴリアスという課長は暴力に訴えるしかない愚鈍な刑事の典型として描かれている。翻訳上の異同はあまり面白いところが見つからないの…

第6章

ティファナからの帰り道、マーロウはドライブの退屈さを嘆く。そのなかで、夜の港町のロマンティックさと自分の生活を対比させ、次のように語る。 “But Marlowe has to get home and count the spoons.” 清水訳は「だが、マーロウは家へ帰らなければならない…

第5章

さて、第5章である。 最後に飲んでから一月後、朝の五時にテリ−がやってくる。コートに帽子、そして手には拳銃という古いギャング映画のような格好をして。この“Old-fashioned kick-em-in-the teeth gangster movie"もよく分からない。スラングなんだろうが…

第4章

第4章は、有名な「夕方、開店したばかりのバーが好きだ。」から始まるレノックスの長台詞で幕を開ける。この台詞を読んで、開けたばかりのバーを訪れたファンも多いにちがいない。もっとも、本にあるように午後四時では勤め人には難しかろう。マーロウのよ…

第3章

第3章は、テリ−とシルヴィア・レノックス夫妻の再婚を紹介する新聞の社交欄記事の文体模倣で始まる。彼らの再婚を伝える社交欄の記事を読むマーロウは、かなり腹を立てているがおおよそ事実だろうと考える。その後に、“On the society page they better be"…

第2章

マーロウがテリー・レノックスを二度目に見たのがクリスマス前のハリウッド・ブールヴァードだった。彼は何日も食べておらず、ぼろ屑同然の姿で登場する。マーロウは、警官に見とがめられたレノックスをタクシーに乗せて家に連れ帰ろうとする。 タクシー運転…

第1章

村上訳の『ロング・グッドバイ』を、久しぶりに再読した。前に出たとき、原書も買っておいたのだが、転勤と重なって、ゆっくり読むことができなかった。旧訳とは照らし合わせて読んだのだが、原書まで手が回らなかった。そこで、今度は、村上訳を読んだ後、…