marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

日本で一番暑い町

猛暑の日本列島。そんな中、日本で一番暑いといわれている岐阜県の多治見市に行ってきました。何を酔狂なと思われるかもしれません。実は、そこにちょっと気になる町を発見したからです。その名も本町オリベストリート。

ドライブルートはこの前行った麦草峠と同じで、伊勢自動車道、東名阪、湾岸、東海環状、中央道多治見IC。駐車場があると聞いていた虎渓山永保寺を探すも見つからず。とにかくお目当てのオリベストリートへ行くことにした。市中の案内表示を参考に数分走るとすぐに見つかった。全長400メートルほどの短い通りである。

創造館というところに車を停めた。ここにも無料駐車場があると聞いていたからだ。多治見は製陶業のさかんな町である。町おこしの一環として陶器を中心に古い町並みを再開発したのがこの本町オリベストリートだ。ギャラリーや骨董店、飲食店を配した小さな町並み。名前は織部焼きで有名な古田織部からとったという。

まずは、正面にあるパン屋さんへ。石窯パン工房アルティジャーノと名のるだけあって見事な店構え。中に入って驚いた。パンの種類の豊富なこと。また、一つ一つが実に美味しそうにできている。特に果物を配したパンは、もう殆どケーキである。通りに面した位置にはカフェが併設され、好きなパンを手に珈琲やお茶が飲めるようになっている。すぐにでもお昼にしたいところだったが、まずは一通り見て回ることにして店を出た。

昭和のはじめ頃まで陶磁器の問屋街だったせいか古民家や蔵が数多く残っている。それを再利用しての町づくりだろうが、狭い町にやたら古道具屋・骨董店が多いのが気になっていた。いくつかの店を冷やかしてから万年青Ⅱという店へ。築百年という蔵がそのまま喫茶店とギャラリーになっている。ここで、猫が金魚鉢の中を窺っている置物を発見。後で買って帰ることにした。

昼食は手軽なところで蕎麦ということにして、表通りに面したそば処井ざわへ。妻と当方はミニ天丼とざる蕎麦セット、葵ちゃん(長男のお嫁さん)はそば米とろろとざる蕎麦セットを注文。このそば米というのがよく分からなかった。見たところただの白飯にとろろがかかったようにしか見えなかったのだが。天丼は海老のかき揚げだが、つゆが甘かった。わりと甘めのつゆが好きな方だが、それにしても甘い。夜は飲み屋になるのだろうか。焼酎の一升瓶がカウンターの前にたくさん並んでいた。蕎麦屋の酒に目がないが、ここで飲むなら三千盛か。

三角屋というアンティーク店が面白かった。元は床屋さんなのかタイル張りの看板や、鋏類、水道のカランといったまあどう見てもがらくたにまじって、扇風機やガラス器が飾ってある。骨董店というのは敷居が高いが、こういう店は気がおけないので大好きだ。紅茶を入れた壺とか、これなら我が家にもあるというのがいくつかあった。

あらかた見て回ったので、万年青Ⅱに戻って金魚鉢猫を買う。妻が中に入って買っている間、外で葵ちゃんと待っていた。店の中から笑い声が聞こえた。「○福氷美味しいですよ。」という妻のはずんだ声が聞こえてくる。買い物を終えて出てきた妻が教えてくれた。伊勢からだというと、洗い物をしていた奥さんが手を拭き拭き出てきて、「伊勢に行きたいんです。おはらい町に。」と話し始めたそうだ。「でも、○福氷は知らなかったみたい。」と、楽しそうに話していた。

アルティジャーノでパンを買って車にもどった。次に目指すは修道院。昭和5年にできた日本男子三大修道院の一つだという。例の如くナビに電話番号を打ち込みながら、曲がり角で急に曲がれという指示に従えず直進。そのまま隣の土岐市まで行ってしまった。おかげで土岐プレミアムアウトレットが近くにあるのを知ったわけで、帰りに寄ることにした。

ぐるっと一回りして修道院に戻った。小高い丘の上に建ち周囲に葡萄畑が広がる風景は日本ではないようだ。小さい頃友だちに誘われて教会通いをしていた妻は、こういうところでは妙に敬虔になる。この日もちゃんと献金していた。「それがね、献金用の箱に賽銭箱と書いてあるの。」と、後で教えてくれた。なるほど賽銭箱にはちがいない、と納得したのだった。この教会ではワインを作っていて試飲ができるとのことだったが、厳かな雰囲気に飲まれてか、妻は言い出せなかったようだ。

修道院から永保寺への道案内があったので、参道を目指した。ところが、着いたところは参道の入り口で、そこからまだしばらく歩かないといけないらしい。どうも、この寺には縁がないようだ。また今度、ということにしてアウトレットに向かった。前回は、このアウトレットに向かう車で渋滞中の隣車線を見ながら走ったので、今回も渋滞を心配していたが、午後3時を過ぎていたからか、難なく駐車場に車を停めることができた。

いつものアウトレットとは客層が異なるのか、ずらっと並んだ店の種類が微妙にちがっていた。ブルックスブラザーズがあったので、リネンのシャツを買った。くすんだ赤の色合いが実にいいものだ。それとクラークスの黒い短靴。最後にクリケットの蝶タイ。葵ちゃんが「そんなのいつするんですか?」と、好奇心一杯の目で聞くので、「いつでもだよ。」と、店の奥を指さした。そこにはブレザーに合わせてボウタイを締めたマネキンがちゃんと飾ってあった。妻は葵ちゃんとおそろのモカシンと、もう一足。前回別のアウトレットでサイズ切れだったパンプスをゲット。実に有意義な一日でした。