妻が、「あきのの湯」で、医療用マッサージャーのお試しにつかまったことはすでに書いた。そのときはよかったのだが、数日してから背中が痛いと言い出した。どうやら、筋か何かを傷めたようだ。入浴後、塗り薬を塗布すると、少しはよくなるのだが、なかなか全快しない。
揉み療治にはよくあるが、もう一度揉まれることで痛みがとれるということもある。温泉の痛みは温泉でとろうと、さるびの温泉に出かけた。ここ の「ささゆりの湯」には、強烈な打たせ湯があるのだ。軟弱な亭主の方はとうてい無理だが、凝り性の妻の方は、この打たせ湯が大の贔屓。もっとも今回は痛み が激しくて、打たせ湯にあたる自信がないとつぶやいていた。そのときは、ぬるめの源泉に長く浸かればいいからと、さるびの温泉に出かけた。その帰り道。
台風の影響で激しく降っていた雨がやみ、外気を入れようと、パワー・ウインドウのスウィッチを入れた。運転席側の窓が降りきろうというとき、いやな音がした。ためしに閉じてみると、やはり上がりきったあたりで異音がする。その日は、締め切ったまま家に帰った。
翌日は晴天。駐車場に停めてあった車に座り、もう一度窓ガラスを開けてみた。やはり音がする。何度やっても同じ結果だ。ついこの間、助手席側 の水きりモールと、ワイパーブレードの交換をしたばかりだというのに。いつもの修理工場に電話をする。一度見せてほしいということで、すぐに駆けつけた。
天気は快晴。絶好のドライブ日和だが、心は晴れない。半時間ほどで工場に到着。市内にはこの車を扱う工場がない。本当は四日市に指定工場があるのだが、もともとジャガーの取扱店だった店がフィアットも扱うことになり、急な修理は家から近いこちらに持ち込むことが多い。
やはり半時間くらい、店の人が淹れてくれた冷茶をすすり、持参したピンチョンの小説を読みながら待った。小説の方は面白い。ピンチョンとも思えないほど読みやすい。修理の待ち時間に読めるほどといったら分かるだろうか。
結果は、窓ガラスの上げ下げをするウィンドウ・レギュレイターのプラスチック部品の破損。それくらいならと思ったのが大誤算。結局レギュレイ ターごと交換しなければならず、4万円を越える出費に。ほうっておくとガラスがストンと下に落ちると脅かされては仕方がない。部品を注文して帰ってきた。 修理は来週になるようだ。
給料がなくなってからの方が、何かと出費がかさむような気がするのは僻みだろうか。車があるから維持費が要る。物を所有するということは、所有した分だけ、心の平穏を脅かすものだなということを痛感した一日であった。