marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

2015-12-01から1ヶ月間の記事一覧

『世界収集家』 イリヤ・トロヤノフ

リチャード・バートンと聞いて、リズ・テーラーの夫だったこともある英国のハムレット役者を思い出す人も今は少なくなったかもしれない。僕等の頃は、まずそちらだった。もう一人のリチャード・バートンが何で知られていたかといえば、子ども向けの『アラビ…

『詩のなぐさめ』 池澤夏樹

両親がマチネ・ポエティックの詩人(福永武彦と原條あき子)であり、自身詩人でもある小説家が、岩波文庫の中に収められた詩を材にとって、気ままに想像の翼を広げ、そこから思いつく異なる時代、異郷の詩人の詩との思いがけない出会いを綴ったもの。詩の鑑…

『好色一代男/雨月物語/通言総籬/春色梅児誉美』 池澤夏樹=個人編集 日本文学全集11

名所旧跡というものがある。人の口に上るので、自分では特に行ってみたいと思っていなくても、一度くらいは行っておいたほうがよいのではと思ってしまう、そんなようなところだ。古典というのもそれに似たところがあるのかもしれない。学校の歴史の授業で名…

『黒澤明と三船敏郎』 スチュアート・ガルブレイス4世

黒澤の映画をリアルタイムで見はじめたのが、『影武者』あたりだからか、ずっと仲代達也に肩入れしてきたのだが、ある時期から古いモノクロ時代の黒澤を見て、圧倒的に三船敏郎のよさが分かってきた。『七人の侍』や『羅生門』の三船も野生的で他にかけがえ…

『書店主フィクリーのものがたり』 ガブリエウ・ゼヴィン

一日のうちに再読することができた。さすがはベストセラー。読みやすさは保証する。主人公を書店主に設定した点で、ジョン・ダニングのクリフ・ジェーンウェイ物やカルロス・ルイス・サフォンのバルセロナ四部作を思い出させる。アイランド・ブックスは店主…

『コドモノセカイ』 岸本佐知子編訳

岸本佐知子編訳による、「子ども」をテーマにした短篇小説のアンソロジー。十一人の作家による十二篇の作品が集められている。どれも、独特の味があり、読書にかかる時間の割りには読後の余韻が長く残る。編訳者の好みによるのだろうが、通常「子ども」と聞…

『私の1960年代』 山本義隆

山本義隆という名前を聞いて、ああ、と思い出す人は世代的に限られているだろう。在野の物理学者として、素人にもよく分かる物理学の歴史を説いた良書の筆者として知られているが、東大全共闘のリーダーとして、当時新聞紙上を騒がしていた名前である。東大…