marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『湖中の女』を訳す 第二十一章(2)

拳は握りしめられたのか、それとも解かれたのか? 【訳文】 私は言った。「私はロスアンジェルスのある実業家のために働いている。自分が噂の種になりたくなくて、私を雇ったわけだ。ひと月ほど前、彼の妻が家出した。そのあと、レイヴァリーと駆け落ちした…

『湖中の女』を訳す 第二十一章(1)

「大いなる熱意を込めて命令通りに行動した」とは何のことやら? 【訳文】 最初に入って来たのは、警官にしては小柄な、頬のこけた中年男で、いつも疲れているような表情をしていた。とがった鼻は少し片方に曲がっている。まるで何かを嗅ぎまわっているとき…

『湖中の女』を訳す 第二十章

<be+being+形容詞>は「いつもはちがうが、今は~している」 【訳文】 レイヴァリーの家の前に警察車両は停まっていなかった。歩道をうろつく者もなく、玄関扉を押し開けても、葉巻や煙草の煙の匂いはしなかった。窓に差していた陽が消え、蠅が一匹、片一…