marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『空腹の技法』ポール・オースター

作家オースター誕生以前に書かれたエッセイ、翻訳書につけた序文、『ムーン・パレス』、『偶然の音楽』発表時のインタビューを併せた雑文集。分類上は「エッセイ」とされているが、オースターが自ら選んだ作家や作品、詩人についての批評である。カフカやベ…

『移動祝祭日』ヘミングウェイ

「もし幸運にも、若者の頃、パリで暮らすことができたなら、その後の人生をどこですごそうとも、パリはついてくる。パリは移動祝祭日だからだ」という、ヘミングウェイ自身の言葉が題辞として付されている。見慣れないタイトルは、この言葉からとられたらし…

『孤独の発明』ポール・オースター

すべてはここから始まる。詩と翻訳から作家活動をはじめたオースター初の散文作品。『孤独の発明』は二部構成。第一部は、自分の父について書かれた「見えない人間の肖像」。これは、一種の人物描写エッセイ(ポルトレ)と考えればいいだろう。第二部は、偶…

『名もなき人たちのテーブル』マイケル・オンダーチェ

人は、いつ何をきっかけにして大人になるのだろうか。マイケルは11歳。セイロン(今のスリランカ)のコロンボから二つの大洋を越えてイギリスに向かう汽船の客となる。幼い頃に分かれた母親がイギリスの港で待っているはずだ。たった一人で三週間の船旅を…

『トゥルー・ストーリーズ』ポール・オースター

「ほかに何を学ばなかったとしても、長い年月のなかで私もこれだけは学んだ。すなわち、ポケットに鉛筆があるなら、いつの日かそれを使いたい気持ちに駆られる可能性は大いにある。自分の子どもたちに好んで語るとおり、そうやって私は作家になったのである。…

『リヴァイアサン』ポール・オースター

「世界は彼のまわりで変わってしまっていた。利己主義と不寛容、力こそ正義と信じて疑わぬ愚かしいアメリカ至上主義、といった昨今の風土にあって、サックス の意見は奇妙にとげとげしく説教臭いものに聞こえた。右翼がいたるところで力を得ているだけでも十…

『幽霊たち』ポール・オースター

クエンティン・タランティーノに『レザボア・ドッグズ』という映画がある。それぞれ相手を知らないで呼び集められた犯罪者集団はお互いを色の名前で呼び合う。ブラックという名前が人気で、みんながその名をほしがったというのがギャグになっていたのを覚え…