marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

2012-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ヘッドランプ・ウォッシャー

車検から帰ってきて一日たった。駐車場に油染みた汚れが三ヶ所広がっているのに気づいた。左前輪前とバンパーの前、そしてそのやや左後方。 ホースで水をかけると気泡が消えず、やはりオイル系の染みだと分かる。 車検をしてくれた工場に電話すると、一度見…

『横しぐれ』丸谷才一

「わたし」は、中世和歌や連歌を専門とする国文学研究室の助手。父の通夜の席で、父の友人であった国文学の黒川先生に思い出話を聞く。実は、戦争が激しくなるちょっと前、黒川先生は父と連れ立って郷里の松山を訪れたことがある。そのとき、道後温泉近くの…

『笹まくら』丸谷才一

プロ野球の監督が選手にくらわすビンタに旧軍の悪弊を見て嫌悪の情をもらす骨がらみの軍隊嫌いである丸谷の根っこがあらわに出た代表作の一つ。 「オリンピック道路」という言葉が文中にあるから舞台は1964年ごろの東京。「文学部の全学生に神道概論が必須科…

『女ざかり』丸谷才一

丸谷才一が亡くなった。ジェイムズ・ジョイスの訳者として、博識を洒落のめしたスタイルで軽妙に綴った数々のエッセイの書き手として、また日本における書評文化の担い手として、そして何より、『女ざかり』その他の長編小説の作者として八面六臂の活躍ぶり…

『螺旋』サンティアーゴ・パハーレス

マドリッドにある出版社の編集者ダヴィッドは、社長から一つの依頼を受ける。それは、ある人気作家を探し当て次回作の原稿をとってくることだった。ただ、そこには問題があった。その作家トマス・マウドは、原稿を郵便で送りつけてくるだけで、誰も顔を見た…

図書館から歩いて帰る

昼食は、富山の名物、「ますのすし」。近所のスーパーで駅弁のセールがある、と新聞の折り込みチラシにあった。「ますのすし」は人気商品なので、すぐに売り切れる。昼前にいったが、最後の二つだった。酢飯の上に鱒を敷き並べ、笹の葉でくるんだものを木桶…

本屋

実家に用があって出かける妻の車に乗せてもらい河崎まで送ってもらった。 用事が終わり、河崎の町をぶらぶらと歩いて帰る。 古本屋があるのだが、あいにく店は閉まっていた。そのまま古い町並みの中を通り抜け近鉄の駅裏に出た。 駅裏の商店街に一軒の本屋が…

カーポート完成

台風17号が接近する中、NTTの下請け工事を請け負っている業者がやってきた。「台風大丈夫ですか?」と、心配する施主の意向など知ったことかというように「大丈夫ですよ。」と、にこにこ顔の現場主任。カーポートの左前方にあって、車の出し入れに支障をきたし…

『天使のゲーム』 カルロス・ルイス・サフォン

一九一七年十二月、バルセロナの新聞社で雑用係をしていた十七歳のダヴィッドは短編小説を書く機会を得た。作品は好評でシリーズ化され、一年後ダヴィッドは新興出版社と専属契約を結び独立。それを機に以前から気になっていた市中に異容を誇る「塔の館」に…