marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第五章(3)

《そのとき、家の裏側からいろいろな種類のものがぶつかる音がした。椅子が後ろに倒れたような音、勢いあまって引き抜かれた机の抽斗が床に落ちる音。何かを手探りし、物と物がぶつかり合い、何事かぼそぼそと呟くだみ声がした。やがて、鍵の開く鈍い音がし…

橋本屋再訪

十月の末に訪れたときはあいにくの休業日で、お目当ての山菜定食をいただくことができなかった。妻の車も新しくなり、せっかくの休みということでリベンジすることにした。三連休の最終日、好天に恵まれて人の出は予想通りの大賑わい。それでも、名張までは…

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第5章(2)

《「そのヴェルマっていう娘は芸人でね、歌手だった。あんたは知らないだろう? あの店に通い詰めてたとも思えないし」 海藻色の眼は瓶から離れなかった。苔が生えたように白い舌が唇に纏わりついていた。「なんとね、酒のご登場だよ」女はため息をついた。…

トゥインゴGTがやってきた。

前日納車されたばかりのルノー・トゥインゴGT。はじめは四日市まで取りに来いと言われたのだが、近くの日産まで運んでもらえたので、そこでレクチャーを受けた。ボディカラーはオランジュブレイズ。0.9L、ターボ付き3気筒、リアエンジン・リアドライブ方…

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第五章(1)

5 《西54番街1644番地は、前にひからびた褐色の芝生のある、ひからびた褐色の家だった。こわもての椰子の木の周りの地面は広い裸地になっていた。ポーチには木製の揺り椅子がぽつんと置かれ、昼下がりの微風を受けて、刈らずに捨て置かれた去年のポイ…

『さらば愛しき女よ』を読み比べるー第四章(2)

《私は<フロリアンズ>で何が起きたか、それは何故かを話した。彼はまじめな顔で私を見つめ、禿げ頭を振った。「サムの店も愉快で静かなところだったんだが」彼は言った。「ここ一月ほどは誰もナイフ沙汰など起こさなかったし」「八年か少なくとも六年前、…