marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

2016-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『直筆商の哀しみ』 ゼイディー・スミス

アレックスは二十七歳。職業は直筆商。直筆商という言葉は訳者による造語で、原題は“The Autograph Man”。日本でいうサインは英語ではオートグラフ。飴売りのことをキャンディー・マンというように、オートグラフを売買する人をオートグラフ・マンという。有…

『アイルランド・ストーリーズ』 ウィリアム・トレヴァー

他国を移動する人々について書かれた作品を集めたのが近刊の『異国の出来事』。同じ訳者による『アイルランド・ストーリーズ』は、アイルランドに根を生やした人々の姿を描いた作品を集めたものだ。路傍の聖母像の話に始まり奇跡の話で締める。昔のLPレコー…

『僕の違和感』上・下 オルハン・パムク

東西文明の十字路イスタンブルを舞台に、ある行商人の半生を描きながらトルコの現代史を点綴する、ノーベル賞作家オルハン・パムクの最新長篇小説。出だしこそ主題をはっきりさせるため、物語の中盤あたりから書き出されているが、主人公の人生を決定する駆…

『異国の出来事』 ウィリアム・トレヴァー

トレヴァーといえばアイルランドという固定観念の裏を行く、異国を旅する話ばかりを扱った異色の短篇集。これには意表をつかれた。「アイルランドの片田舎で過ごした少年時代に最も影響を受けたのが映画や探偵小説だった」と告白しているトレヴァー。誰もが…

『ジャック・リッチーのあの手この手』 ジャック・リッチー

ハードボイルド探偵小説の翻訳やミステリ評論で知られ、先頃亡くなった小鷹信光氏の編訳によるジャック・リッチーの短篇集。多方面の雑誌読者に合わせて、ミステリはもちろん、ラブロマンス、SF、怪奇小説、西部劇小説とジャンルを超えた作家であったジャ…