marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

2014-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『ブルックリン・フォリーズ』ポール・オースター

「フォリ−」とは愚行を意味する名詞だが、複数形の「フォリーズ」になると、女性たちの歌や踊りを中心としたレビューを意味するのが通例だ。となれば、表題の意味するところは、ブルックリンを舞台にした愚行の数々(についてのショー)、といったことにでも…

『日の名残り』カズオ・イシグロ

主人公スティーブンスは、ダーリントン・ホールと呼ばれる由緒正しい名家の執事である。大戦後、ダーリントン卿は失脚、館はアメリカ人ファラディ氏の所有するところとなる。家付きの執事として仕えることになったスティーブンスに新しい主人は、一度ゆっく…

ただいま改修中

連休といっても、毎日がやすみの身ではどうということはない。いつものように、朝から読みかけの本(因みに今日はカズオ・イシグロ著『日の名残り』)を読み、散歩の時間になったら、帽子とマスクとサングラスをつけて外に出るだけだ。 今年の連休は上天気に…

『書庫を建てる』松原隆一郎/堀部安嗣

『劇的ビフォー・アフター』というテレビ番組がある。狭小住宅や危険家屋で暮らす施主の依頼に応え、その家屋をリフォームする過程を、司会者とゲストがクイズなどに答えながら視聴者とともに見守り、リフォーム前と後の落差に感動する施主の反応を見て楽し…

『十二の遍歴の物語』G・ガルシア=マルケス

ガルシア=マルケスの訃報に接し、その死を悼んで何か書きたいと思ったが、『百年の孤独』はもとより、すでに多くの著書や関連する書物について書いてしまっている。そこで、あらためて翻訳された書名を眺めわたしてみたところ、未読の短篇集を一冊見つけ出し…

『寂しい丘で狩りをする』辻原 登

表題はエピグラフに引かれたヘミングウェイの「たしかに、狩りをするなら人間狩りだ。武装した人間を狩ることを長らくたっぷりと嗜んだ者は、もはや他の何かに食指を動かすことは決してない」(「青い海で―メキシコ湾流通信」)から採られたもの。いかにも物…

 49章

エイモスの運転で、リンダがやってくる。マーロウはシャンペンでもてなそうとするが、リンダのボストンバッグを部屋に入れかけたところで口論になる。シャンペンくらいでベッドをともにする女と見られたくない、と怒り出すのだ。一度は、謝るマーロウだが、…

 48章

家の中で待ち構えていたのは、メンディ・メネンディス。警告を無視したマーロウに報復するための来訪だった。メネンディスはマーロウを三度殴るが、話の途中で相手の隙を突いてマーロウもやり返す。メンディが床に倒れたところでバーニーが登場する。すべて…

 47章

ジャーナル紙の記事を受けて、スプリンガー地方検事は記者会見を開き、公式見解を発表する。ジャーナル紙の編集長ヘンリー・シャーマンは検事の発言をそのまま紙面に掲載するとともに、署名入りの記事ですばやく反論する。モーガンが心配して電話をかけてく…

 46章

長い一日も終わろうとしていた。マーロウは車を飛ばしてヴィクターズへ向かった。開けたばかりのバーでギムレットを味わいながら、夕刊を待とうというのだ。記事はマーロウの望むとおりの形で載っていた。別の店で夕食をとって家に帰ると、バーニーから帰り…

 45章

事務所に戻ったマーロウは、たまっていた郵便物をボールに見立て、郵便受けからデスクへ、デスクから屑籠へ、と併殺プレイを独演し、ほこりを払ったデスクの上に写真複写を広げると、もう一度読んだ。そして、顔見知りの新聞記者であるモーガンに電話をかけ…

『映画術』塩田明彦

現役の映画監督による、「映画と演出の出会う場所から映画を再考する」という視点からの連続講義。映画学校で生徒を前に講義した内容を原稿化したものである。ところで、『映画術』という表題を持つ本には、すでに晶文社刊『定本 映画術 ヒッチコック/トリ…