marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

2011-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『誰がパロミノ・モレーロを殺したか』 マリオ・バルガス=リョサ

「若い男がイナゴマメの老木に吊るされ、同時に串刺しにされていた。」 書き出しからハードボイルドタッチである。主人公というか、探偵の助手でワトソン役をつとめる警官の名が、リトゥーマ。代表作の一つ『緑の家』にも登場するピウラ出身の若者なのだ。つ…

『ラ・カテドラルでの対話』 マリオ・バルガス=リョサ

リョサ初期の長篇ながらすでにただならぬ挫折感が漂う。ペルーという国とその国民性について。何をしたいのか、どうなりたいのか分からないままに常に状況に身を任せてしまう自分について。身を滅ぼすと知りながら、やめられない酒や煙草、女そして男。つい…

伊賀路迷走

MIHOミュージアムで開催中の「神仏います近江」展に出かけた。滋賀県にある三つの美術館、博物館が連携して近江に残る仏像、仏画、神像等の名品を展示する美味しい企画である。全部一度に行くのは大変なので、今回はMIHOミュージアム『天台仏教への…

『紙の民』 サルバドール・プラセンシア

段ボールの脚とセロファンの肝臓、ティッシュペーパを撚って作られた血管でできた「紙の女」メルセド・デ・ペパル。バチカンが封鎖した人間を作る工場で、折り紙で人工臓器を作ることのできるアントニオの手によって生み出された女。彼女の中に入ろうとする…