marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

2014-02-01から1ヶ月間の記事一覧

『写字室の旅』ポール・オースター

写字室というのは、中世ヨーロッパの修道院で写本をする人が使った部屋。映画『薔薇の名前』に、そういう部屋が出てきたのを覚えている人も多いだろう。他の使用に供さず、ただひたすら物語を紡ぐことだけのために用意された部屋。主人公が収監されている(…

『豊国祭礼図を読む』黒田日出男

「豊国祭礼図屏風」とは、慶長九(一六〇四)年八月、秀吉の七回忌に執り行われた豊国神社臨時祭礼の模様を描いた六曲一双の屏風である。現存する作品が二点あり、ひとつは京都の豊国神社所蔵の狩野内膳作、もう一点は名古屋の徳川美術館蔵の岩佐又兵衛作と…

『アヴィニョン五重奏Ⅲコンスタンス』ロレンス・ダレル

『アヴィニョン五重奏』は、文字通り五部作。「コンスタンスあるいは孤独の務め」は、その第三作、サイコロの目でいうところの真ん中にあたる作品である。それだけに本作は前二作に比べても一段と重厚さを増し、後に続く二部作を見通す要衝として、その重み…

『黒富士』柄澤 齊

『ロンド』の作者が満を持して書いた長篇第二作である。北斎の「赤富士」のように、墨一色で描かれた富士の絵をめぐるミステリかと思って読みはじめたのだったが、どうやら違っていたようだ。富士山を舞台にした伝奇ロマンとでもいえばいいのだろうか、国枝…