marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

『大いなる眠り』註解 第十八章(5)

《「このように事件を揉み消されて警官がどう感じるか、君は知るべきだ」彼は言った。「君には逐一陳述してもらわねばならない――せめて書類の上だけでもな。二件の殺人を別件として処理することは可能だろう。その両方からスターンウッド将軍の名前を外すこ…

『大いなる眠り』註解 第十八章(4)

《ワイルドは葉巻を振りながら言った。「証拠物件を検分しようじゃないか、マーロウ」私はポケットの中身をさらえて彼の机の上に置いた。三枚の借用書とガイガーがスターンウッド将軍に宛てた名刺、カーメンの写真、それに暗号化された名前と住所が記載され…

『地下鉄道』コルソン・ホワイトヘッド

南北戦争が起きる三十年ほど前、ヴァージニア州にある農園で奴隷として働いていたコーラは新入りのシーザーという青年に、一緒に逃げないかと誘われる。はじめは相手にしなかったコーラだが、農園の経営者が病気になり、酷薄な弟の方と交代することになって…

『大いなる眠り』註解 第十八章(3)

《クロンジャガーは私の顔から決して眼をそらさず、私が話す間どんな表情も浮かべることはなかった。話し終えると彼はしばらくの間完璧な沈黙を守った。ワイルドは黙ってコーヒーをすすり、静かに斑入りの煙草を吹かしていた。オールズは彼の片方の親指を見…

新車

妻はどうやら私が「引きこもり」だと思っているらしい。 それで、前の車が壊れた後、新しい車選びをしない私をせっついて新車を買うことにした。アルファロメオの後継者はジュリアだが、ディーラーが扱うのをやめたので、県内では購入が不可能になってしまっ…

『大いなる眠り』註解 第十八章(2)

《タガート・ワイルドは机の向こうに座っていた。太った中年男で、本当は表情のない顔を友好的な顔つきに見せるのを澄んだ青い眼で間に合わせていた。彼の前にはブラックコーヒーのカップが置かれ、入念に手入れされた左手の指には細身の斑入りの葉巻があっ…