marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

2013-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『旅立つ理由』旦 敬介

パステルカラーにぬり分けられた家並みや、陽盛りの路地にできたわずかばかりの日陰の椅子で飲む生温かいミント茶、親しげにすり寄ってきては、何かとものを売りつけようとする少年たち。ピレネーをこえた異郷の旅がなつかしくよみがえってくる。町の書店で…

『孤児』ファン・ホセ・サエール

ホセ・ルイス・ブサニチェ著『アルゼンチンの歴史』(1959)のなかに、フランシスコ・デル・プエルトなる人物に関する次のような記述がある。 「一五一五年、ファン・ディアス・デ・ソリスの率いるインディアス探検船団に見習い水夫として雇われたこの男…

『寒い国から帰ってきたスパイ』ジョン・ル・カレ

シンプルなストーリー展開で、小気味よく読ませる。『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』に始まる三部作でゆきつもどりつを繰り返す晦渋な語り口に翻弄された読者には信じられないような読みやすさ。ジョン・ル・カレの出世作である。この作品がス…

オーニング

うっとうしい梅雨が明けたと思ったら、すさまじい暑さが続く。テラスに当たる日差しの明るさと暑さに、日よけを考えた。以前に少し離れたホームセンターで目をつけておいた突っ張りオーニングだ。 近くの店に出向いたが、残念ながら置いていなかった。ドライ…

『リトル・ドラマー・ガール』ジョン・ル・カレ

スマイリー三部作をはじめとして、ル・カレの小説は再読を強要する。一読して分からないというのではない。時間や場所、登場人物の異なる複数のストーリーが並行して展開する小説は少なくないし、もっと大量の人物が交錯する小説も何度も読んできている。文…

『ナイト・マネジャー』ジョン・ル・カレ

テレビのモニタに空爆されるバクダッドの映像が流れるチューリヒの高級ホテル・マイスター・パレス。ナイト・マネジャーをつとめるジョナサン・パインは夜間、吹雪をおして到着する一団の到来を待ち受けている。一群を率いるのはリチャード・オンズロウ・ロ…