marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

2013-02-01から1ヶ月間の記事一覧

第29章

【銃声のした部屋に入ると、夫妻は拳銃を奪い合っているところだった。弾丸は天井に穴を開けただけで二人は無事だった。マーロウは、発砲を悪夢のせいにするウェイドに、自殺を試みたが度胸がなかったのだろうと言い放つ。あまりの言葉に腹を立てたアイリー…

『落語の国の精神分析』藤山直樹

著者は日本にたった三十人ほどしかいない精神分析家にして、年に一度はみっちりと新ネタを仕込んで客に披露する落語のパフォーミングアーティスト(職業的落語家ではない)である。小さい頃からの落語好きが嵩じて、喰いっぱぐれる心配のない今の職業につい…

第28章

【眠りに落ちる前、ウェイドがマーロウに始末しくれと頼んだ、タイプライターに残された書きかけの原稿がそのまま引用されている。いかにも飲酒が度を越した作家が書きそうな自己憐憫の臭う愚痴っぽい文章だが、美しい妻に見捨てられた寂しさや、キャンディ…

第27章

【ウェイドを寝かしつけたマーロウは、彼がどうして怪我をしたのか階下にある書斎を調べる。訳はすぐ分かった。壁際に転がった金属製の屑籠に血がこびりついていた。酒に酔ったウェイドが椅子を倒して、下にあった屑籠の角で頭を切り、蹴っ飛ばした後、外に…

第26章

マーロウは、怪我をしたロジャーをキャンディの手を借りてベッドに運ぶ。キャンディは、夫人との関係を揶揄したことで、マーロウに痛い目に合わされる。気がついたロジャーは、マーロウに夫人の無事を確かめた後、睡眠薬を飲んで眠りにつく。非番のキャンデ…

第25章

第25章一週間後の夜、ウェイドから「来てくれ」と電話があった。車を飛ばして駆けつけてみると、アイリーンは煙草を口にくわえ玄関口に立っていた。ウェイドは、近くの叢の陰で頭から血を流して倒れていた。アイリーンに電話で呼ばれてやってきたローリング…

「心朗らなれ、誰もみな」 アーネスト・ヘミングウェイ

柴田元幸が自ら選び訳したヘミングウェイの短篇集。時代的には初期の短篇集『われらの時代』から晩年の未完の長篇『最後の原野』まで、舞台も時代も異なる作品を集めた19篇から成る。熱狂的なファンは別として、髭面の写真に「パパ」という愛称、それに映…