marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

近江商人の町


滋賀県に行って来ました。

出かける前、どこに行くか決められず、とりあえず温泉セットだけ用意して高速に乗った。新名神方面でどこか美味しい物が食べられて温泉のある場所、というところまでは決まった。

走り出してしばらくすると、前に一度行ったことのある温泉を思い出した。たしか岩魚が食べられて温泉のロケーションもよかった。湖東三山の近くにある紅葉で有名な寺だったが、名前が出てこない。

思い出した。永源寺だ。さてどう行くのだったか。ナビを使い出してから道路地図を持たなくなった。以前は必ず用意したものだったが。道の駅「あいの土山」で休憩し、地図を見た。名神八日市ICで下りて30分くらい。

高速が休日1000円になってから下道を走らなくなった。速いのは速いのだが、面白みがない。昼前には温泉に到着した。「八風の湯」は、入館料が1500円と割高だが、作務衣風の室内着とタオル、バスタオルつき。入浴後、作務衣のままで食事ができるところが温泉宿風でうれしい。そして、食事した後、もう一度汗を流すこともできる。赤とんぼが舞う露天風呂を堪能した後、途中の案内板で見かけた「近江商人の町」に向かう。

東近江市五個荘は、近江商人発祥の地。白壁土蔵の町並みが今に残る。この昔風の町並みというのが、どうにも好きで、どこに行っても歩いてみないとおさまらない。ナビに入力すると一発で出た。

東近江市役所前は、落ち着いた並木通りが実に好ましい。中心地を抜けてしばらく田舎道を走ると、案内板が出てきた。無料駐車場に車を止めて歩き始めた。

人通りがない。こういう町に来て思うのは、生活臭の薄さである。琺瑯びきの看板や鯉の泳ぐ掘割と、レトロな印象を残す町並みながら、誰一人出会わない。時おり行き過ぎるのは、観光客くらい。町の人はひっそり息をつめているのだろうか。大きな祭提灯がぶらさがった玄関の前を通り、地蔵堂を過ぎ、日盛りの道を歩いた。

この町を訪れることは計画になかったので、カメラの用意をしてなかった。自転車に乗った住人がちょうど通りかかったところを妻の携帯を借りてパチリ。それが冒頭の一枚。

近江商人屋敷の特徴の一つに舟板張りの土蔵がある。土蔵の下壁が舟形に切り込みの入った板で張られているのだ。白壁の白さと舟板の重厚な黒がくっきりとしたコントラストを見せて見事である。

残暑が厳しく、日盛りの町を歩いているのもつらくなってきたので、引きあげることにした。帰り際に「金堂まちなみ保存交流館」の中をのぞかせてもらった。やはり元は近江商人の一人中江氏の屋敷跡で、現在は交流館として使われているため無料である。以前は庭であった空き地に当時としては珍しいコンクリート製の滑り台が残っていた。そのあたりにプールがあったそうで当時としてはモダンなライフスタイルであったことが忍ばれる。今は水が枯れているものの大きな庭石を配した池といい、豪壮なものである。

今度はちゃんとカメラ持参でもっと涼しくなってから来ようと思った。