marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

夏仕舞い

駐車場の屋根を支える柱と柱の間にネットを張り、風船蔓を仕立てるようになってから何年たつだろう。今年のあいにくの天気で、長雨やら颱風やらにいじめられて、種をつけるまでに飛ばされた風船も少なくなかった。蔓の伸びも例年より勢いがなかった。それでも、いくつもの風船が色を濃い茶色に変えた。

それを収穫して種をとった。風船蔓の種は丸薬のような黒い球状で、その上に白いハート型の模様をつける。種が大きく、模様がはっきりしているものが発芽しやすく、大きく育つようだ。今年は例年よりは取れ高が少ないのはやはり天候のせいだろう。

まだ緑の風船をぶら下げている蔓を残し、収穫を終えた蔓を片付けた。ひと夏というもの、朝夕水をやりつづけたので、プランタから流れ出た水で駐車場の外回りのコンクリートには黒い痕がついている。以前、友人が貸してくれた高圧洗浄機を思い出し、ネットで検索した。いろいろあったが、車洗い用の部品がセットになっているものにした。

二日後、玄関前のタイルに寝そべるニコの相手をしていると、宅配の車が停まった。もう来たのかと驚いた。早速組み立てた。三メートル二千円のホースは注文しなかったが、自前のホースリールがぴたりとはまった。スイッチを入れると小気味よい振動が手に伝わってきた。黒い水垢があれよあれよととれていく。

ニコの寝そべるお気に入りの煉瓦タイルもきれいになった。次の日は、掃き出しの前にガーデンチェアとテーブルを置いた同じ煉瓦タイルのポーチも洗浄した。黝ずんでいた目地が白くなって、すっかり見違えるようになった。

風船蔓の色が全部変わったら、プランタの下もきれいにしなければ。そしてプランタをしまったら夏も終わりだ。見上げると、もうすっかり秋の空だ。鱗雲が夕陽を浴びて茜色に染まっている。