marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

橋本屋再訪

 

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十月の末に訪れたときはあいにくの休業日で、お目当ての山菜定食をいただくことができなかった。妻の車も新しくなり、せっかくの休みということでリベンジすることにした。三連休の最終日、好天に恵まれて人の出は予想通りの大賑わい。それでも、名張までは渋滞もなくこぎつけた。それにしても、名張という町はどうしてこんなに信号が多いのだろう。

それも、必ず赤信号につかまる。たいていの幹線道路では信号は系統化されていて、うまく行けば、スムーズに通過できるようになっている。しかし、名張の道路は道幅はさほど狭くもないのに、妙な造りで片側一車線で通行するようになっているから、信号が青に変わっても最後尾の車が通りきるまでに再び赤に変わってしまう。こうして、どんどん車の列が長くなり渋滞が起きるという仕組みだ。

予想通りここで時間を食って、室生寺に到着したのは二時を回っていた。電話で何時までにはいればいいか前もって聞いたあったからあわてはしなかったが、腹はすいていた。ところが、それまではすいていた道に急に車が溢れ出した。それもロードスターや、高級外車が次々と坂道を下りてくる。きっとツーリングの帰りなのだろう。そう話しながら店に向かうと室生寺参道の細道が人と車で溢れかえっていた。

ツーリングの参加者が山を下りてくる車列とこれから室生寺に向かう車が細い道で対向しようとするが、参拝客がその間を抜けようとするので二進も三進もいかなくなっていた。特に橋本屋の前が細くなっていて、店の人が交通整理をしていた。青のロードスターがリアをはみ出す形で停まっていた。どうやらこちらを通すために待っていてくれるらしいが、まだ車両感覚がつかみきれていない妻はハンドル操作に手間取っていた。

助手席の窓を開けて道路際を確認していると、半纏を着た女の人が「ハンドルはまだ切らない。左に回す」と指示を出してくれた。内輪差を見たのだろう。妻が左に切ると、前輪はぎりぎりのところを通って対向車をかわすことができた。そのまま奥に進むと、ツーリングの最後尾の車がまだ列を作っていた。その中には一時は購入を考えたアルファロメオのジュリアもいた。思ったより小さく見えた。四日市にあったら試乗していたのに、とちらっと思った。別館の駐車場に車を停めて歩いて戻った。

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先客は昼食をすませたのだろう、店はがらんとしていた。先ほどの女性に交通整理の礼を言って、勧められた席に着いた。窓際から川を挟んで室生寺の紅葉が臨める絶好の席だ。妻は山芋の揚げたのが食べたいと、女性限定の山菜ランチ、当方はとろろが食べられる「あじさい定食」。すいているからか、すぐに出てきた。妻が、山菜料理は冷めていても構わない。温かいのは揚げ物だけだから早いのだろう、と言った。なるほどそういうものか。(写真は山菜ランチ)

 

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相変わらず、ここの白和えは美味しい。大和芋のとろろは粘りがすごくて御飯の上で丸まって、なかなか混じらない。お好みにより醤油をかけて、と言われたので、少し垂らした。出汁でのばしたのとはちがう、もちもちした食感が半端ではない。これだけで箸が進むので、後の料理の出番がない。以前は妻の車で来たときはお酒を頂いたものだが、近頃はやめている。いつでも運転を替わる気でいるからだ。

お金を払いながら、妻が店の主人らしき人と話をしている。前回来たときは休みだったという話だ。「十一月は休まないんですが、一日は法事だったので」とのことだった。紅葉見物の客が多い十一月はかき入れ時なのだろう。「室生寺はこれからですか?」と聞かれた妻が「室生寺には行きません。ここに来たかったんです」と答えていた。前の川にかかる赤い橋に足を向ける私に「室生寺には行きません、と言ってしまったのに」と妻。「橋だけ」と私。「いつ撮っても同じ写真になる」と、妻が笑って言った。

帰りは運転させてもらった。前よりは運転に慣れてカーブも怖くなくなった。それでも、シートの高さは他車の比ではない。すれ違う車を上から目線で見下ろす感じだ。小さい車なので高くすることで室内を広く感じさせようということなのだろうか。信号で止まった後、アクセルペダルを踏むと背中がシートに押しつけられる感じがする。排気音と、この圧迫感が心地よい。ほぼ二時間の運転だったが、全く疲れなかった。いい車だ。