先日、書斎で本を読んでいると妻が慌ただしくドアを開けて
「あなた大変、ニコまた病院に行かなきゃ」という。
聞けば、トイレに敷いてあるシートにきらきら光るものがあるという。尿路結石にかかった猫が出すストラバイト結石らしい、と。
最近、ニコは元気で、冬になると具合の悪くなる後ろ肢も今年は何のこともなく安心しきっていた。だいたいそういうものである。安心しきっていると何かが来るのだ。とにかく、嫌がるニコを車に乗せ、かかりつけの動物病院へ。エコーで診てもらうと、やはり結石が見つかった。ただ、大きなものではないので、療法食で対処できるという。
ニコは薬が嫌い(好きな者はいないだろうが)で、飲ませるのに難儀するので、これは助かった。詳しく検査するため、尿を採取するキットをもらって家に帰った。おしっこをするときスティックの先をあてがうのだそうだが、そんなことはとても無理。神経質なニコがそんなこと許すはずがない。トイレ・シートの端を折って置き、簀の子の下に尿がたまるように工夫をすることで、難なくゲット。後日顕微鏡で見せてもらうと、小さくきらきら光る石のようなものがたくさん見えた。
食事にこだわりがあったニコだが、最近は食べきるともらえる「ちゅーる」目当てに三食完食できるようになった。サンプルでもらってきた療法食も嫌いではなさそうで、これで様子を見ることにした。
先日、神戸に住んでいる孫の生活発表会とやらで、二人して早朝から家を空けなくてはならず、トイレの心配をした。きれい好きな性格で、いつもトイレはすぐ始末する癖がついている。二人ともに一日中留守という事態はまず経験したことがない。しかし、猫のトイレの世話があるから、という理由でせっかくの祖父母限定の招待を断るわけにもいかず、食事はタイマー付きの給餌器、トイレは一階のケージと二階の水入れの傍に二つ用意して、午前五時に家を出た。
さいわい、九時半のオープニングに間に合い、孫の演技を楽しむこともできた。別れを惜しむ孫を振り切るように帰路に着いた。あまり暗くならないうちに家に帰りたいからだ。昼間は南の日が入る妻のベッドで日向ぼっこをしている。二人で買い物をしても、暗くなる前にはいつも帰るようにしている。結局六時を回ったが、ニコは元気で待っていた。
翌日はトリミングの日で、嫌がるニコを車に乗せ、動物病院付属のトリミングでカットとシャンプーをしてもらった。顎の下の毛が長くなり、毛づくろいをするたびに口に入ってくるのが邪魔だったが、これでもう安心だ。一回り小さくなって帰ってきたニコは二日分甘える。ふだんは、妻にだけ甘えるのだが、この日は、私にも甘えてきた。これはこれで嬉しいものがある。孫の家からは明石海峡大橋が間近に見え、それはいい眺めなのだが、ニコがくつろいでいる姿に勝る景色はない。また、しばらくどこにも行けそうにない。