marginalia

読んだ本の話や一緒に暮らす猫のこと、それと趣味ではじめた翻訳の話など。

2014-06-01から1ヶ月間の記事一覧

寧楽美術館

奈良にある寧楽美術館で開催中の韓国陶磁の展覧会に行ってきた。場所は東大寺の近く。県庁地下にある駐車場に車を停めて徒歩五分くらいか。観光地とも思えぬくらいの閑静な場所に美術館はあった。 高麗青磁が中心のこぢんまりとした展示だったが、青磁象嵌の…

『アヴィニョン五重奏Ⅳセバスチャン』ロレンス・ダレル

『アヴィニョン五重奏』も四巻目。前作「コンスタンス」で予告された「手紙」が物語の鍵を握ることになる。アッファド宛のその手紙とは、グノーシス主義の供犠としての「死」が許されたことを示すもので、本人だけが知ることができる死の日時が記されている…

懐かしのナポリタン

妻のいない月曜日も今週で終り。でも、今日は自分で何かつくらないといけない。 といってもできるものは限られている。というわけで、今週もパスタに決まり。 この前知人が自分で作ったジャガイモと玉葱をもらったばかり。ハムやピーマンは常備してある。ケ…

『闇の中の男』ポール・オースター

これもまた、作者の言う「部屋にこもった老人の話」系列のひとつで、五作目に当たるこの作品が最後の作品になる。主人公の名はオーガスト・ブリル。「元書評家で七十二歳、ヴァーモント州ブラトルボロ郊外に、四十七歳の娘、二十三歳の孫娘と暮らしている。…

第50章

一時間後、二人はまだベッドのなか。裸の腕をのばしてマーロウの耳をくすぐりながらリンダが「結婚しようと思わない?」ときく。よくもって六ヶ月だろう、というのがマーロウの返事。あきれたリンダは、人生に何を期待しているの、起きるかもしれないリスク…

キャベツとアンチョビのパスタ

妻がボランティアのスキルアップ講習のため、出かけていて昼は自分で何とかしなくてはいけない。いつもなら、何かはあるのだが、ここ三日というもの、次男が夕食に来られないので、買い物に行かずに済ませている。妻は昨夜も友人との会食で、回鍋肉を作って…

『モンフォーコンの鼠』鹿島茂

オノレ・ド・バルザックといえば、一作品の登場人物を他の作品でも使い回す「人物再登場法」を駆使し、総体として『人間喜劇』という一大世界を創りあげた19世紀パリを代表する大文豪だが、そのバルザック本人や関係者、さらには作中人物や友人ヴィクトル…

「元気なぼくらの元気なおもちゃ」ウィル・セルフ

[rakuten:guruguru2:11294162:image] 期待にたがわぬウィル・セルフ本邦初の短篇集。多くの作家の短篇を集めたアンソロジー『夜の姉妹団』で一篇読んだだけだが、妙に心に残るものがあったのがウィル・セルフという作家だった。巻末の邦訳リストにあったこの…

「南山城古寺巡礼」

京都国立博物館で開催中の「南山城の古寺巡礼」展に行ってきた。特別展がこの15日で終わってしまうので、梅雨空の具合を気にしつつも出かけてきたのだった。 はじめは、駅で昼食をとってからゆっくり見学と思っていたのだが、近鉄特急の連絡が予想外にうま…

『古代の遺物』ジョン・クロウリー

『エンジン・サマー』、『リトル、ビッグ』で知られるSF、ファンタジー界にとどまらないジャンル横断的な作家ジョン・クロウリーのおよそ四半世紀にわたる短篇の中から12篇を発表年代順に配列した著者最新の日本オリジナル短篇集。寡作、しかも代表作『…

『夜の姉妹団』柴田元幸編訳

少し前の本だが、図書館の新着図書のなかにジョン・クロウリーの『古代の遺物』があるのを見つけ、検索をかけたら、表題作の短篇が収まった柴田元幸訳編による、この一冊が引っかかってきた。スティーヴン・ミルハウザー、スチュアート・ダイベックはじめ、1…

今日、ダイニング・セットを新調した。

妻が、友人を夕食に招待したとき、年代物の食堂の椅子が気になった。革張りのそれは、お気に入りの一品だったが、なにしろ、古びてきていた。特に、頭のあたる部分は、ニケが乗っかって来ては爪をとぐものだから、バリバリに毛羽立っていた。 気のおけない友…